花王が業務用製品の受注に使うFAXの一掃に乗り出した。病院やホテルなど約5000の顧客について、中小企業共通EDI(共通EDI)への移行を図る。花王も取引先も、受発注に伴う手間やコストを大幅に抑えられる見込みだ。

 花王が大手スーパーや量販店に提供する家庭向け製品の大半は「流通BMS(流通ビジネスメッセージ標準)」と呼ばれる流通業界向けのEDIなどの電子取引を介して受注している。大手の小売店で花王製品が売れてPOS(販売時点情報管理)レジを通過すると、花王に自動的に発注データが届く仕組みもある。

 ところが業務用石けんなどの業務用製品は全く別だ。受注件数の約6割がいまだにFAXで届き、1日当たりの受信枚数は約1400枚に及ぶ。FAX情報を社内システムに手入力するのにコストがかかっている。

 FAXが多い理由は、取引先に中小企業が多いからだ。流通業に属していない取引先は流通BMSが使えず、花王に発注するためだけにシステム投資をするのも難しい。花王にとっても売り上げが伸びて取引先や注文数が増えるほど、将来的にコストがかさむ。「今から手を打ってコストを抑える必要があった」(花王の会計財務部門経理企画部の上野篤氏)。

 取引先によっては「Web-EDI」と呼ばれるインターネットを利用したEDIを用意している。だがこの仕組みによる受注にも手間がかかる。花王の担当者が取引先のWeb-EDIサイトにログインして、発注書を印刷したりCSVデータをダウンロードしたりする必要があるからだ。

 花王は受注すると翌日には製品を納入する。担当者は午前10時から正午までに受注処理を済ませて商品を配送する物流担当者に注文内容を伝えなければならない。

 取引先に納期を回答したり、出荷を報告したりする必要もある。「限られた時間内に受注処理を終えるために社内に担当者が張り付いていなければならない」(花王プロフェッショナル・サービスの依田健治カスタマートレードセンター統合オペレーショングループ部長)。業務用製品の受注業務だけを見てもかなりの手間がかかっているわけだ。

中小が導入しやすいEDIを選定

 FAXやWeb-EDIの代替手段として、花王は中小企業の取引先との間で導入しやすいEDIを探していた。「ちょうど渡りに船」(上野氏)となったのが、2017年4月に中小企業庁が公募して実施した共通EDIを使った実証事業だった。「最低限の共通項目を入力するだけで注文でき、操作も簡単」(上野氏)と判断して導入を決めた。

図 花王の業務品発注のEDI化の事例
FAX発注から共通EDIを使ったWeb発注に切り替え(画像提供:花王)
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 取引先から届く発注データは企業間EC(電子商取引)を手掛けるインフォマートが「共通EDIプロバイダー」としてデータを変換して花王の基幹業務システムに送る。花王は受信したデータに在庫や医薬部外品など管理に必要な情報を追加し、基幹業務システムで処理できるようにした。

 花王の取引先はパソコンやモバイル端末からインフォマートのクラウドサービスである「BtoBプラットフォーム」の最も簡易な「受発注ライト機能」を利用して発注できる。取引先は無料でシステムを利用できる。

 花王はインフォマートに登録した取引先や商品のマスターデータを基に受注し、配送までの作業を自動化した。これによって「花王の発注書を利用している取引先がインフォマートの画面から注文を入力すれば、花王は自動的に受注処理を進められる」(上野氏)。

 花王プロフェッショナル・サービスは実証事業を終えた後、2018年に全国253カ所の取引先に、共通EDIを利用した発注に切り替えてもらった。2019年中はさらに900の取引先にFAXから共通EDIへの切り替えを求める計画だ。実際に説明しながら画面を操作してもらうと、翌日からEDIで注文する顧客もいるという。FAXの撲滅を目指す花王の挑戦によって、共通EDIの利用が広がりつつある。

図 花王プロフェッショナル・サービスのWeb受注の流れ
業務品の受注業務を共通EDIで効率化(出所:花王の資料を基に日経コンピュータ作成)
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