オンライン申請のために、紙の証明書類を取り寄せる。笑い話のような電子行政がまかり通っている。その元凶は添付書類が「紙」の形式にとらわれているからだ。

 無料で配布しているのに2年たっても普及率は10%強。マイナンバーカードの普及の遅れは、カードが最も活躍するはずの電子行政サービスの低調ぶりを象徴している。

 自宅にいながら様々な手続きができる電子行政サービスと、その際の本人認証に使うマイナンバーカードの普及は、ニワトリと卵のような関係にある。普及を阻害する互いの要因を解決していけば、相乗効果により普及は進むはずだが、現状は足踏み状態だ。

書類をスキャンする非合理

 互いの歯車がうまくかみ合い、回り始めるためのハードルは未だ高い。典型例が国税庁の「e-Tax(国税電子申告・納税システム)」だ。

 e-Taxは2016年4月に、これまで別便での郵送が必要だった添付書類をPDFなどに変換して電子提出できるようになった。ようやく全ての手続きがオンラインで完結する。

 しかし個人の納税者からの評判は必ずしも高くない。様々な紙の証明書類をそろえる手順は従来通り。これらをスキャナーで読み込ませてファイルを準備すると意外に手間がかかるからだ。

 e-Taxは事前に利用申請が必要だ。申請に使うPCにはカードリーダーを取り付けなければならない。e-Tax用ソフトやJavaの実行環境などのインストールも必要となる。これらの手間を含めてトータルで見れば、「紙の書類をそろえて、税務署の窓口に持ち込んだ方が早い」というのが個人納税者の一般的な見方だ。

 添付書類をオンラインで提出できるようにしても納税者の手間が軽減しないのは、行政や関係機関が発行する様々な証明書類が「紙」の形式に縛られているからだ。

 例えば、個人の納税者が税控除の申請で準備する機会が多い書類が医療費と保険料支払いの証明書の2種類とされる。現在はこれらの証明書を健康保険組合や医療機関、金融機関から紙で受け取り、納税申告の際に提出する。

 野村総合研究所(NRI)未来創発センターの梅屋真一郎制度戦略研究室長は「医療費と保険の2分野で関係機関が連携し、支払い証明をデータとして提出できれば、電子納税の利便性が大きく変わるはずだ」と指摘する。

この先は有料会員の登録が必要です。「日経コンピュータ」定期購読者もログインしてお読みいただけます。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら