ベンダーへの丸投げから脱却し、自らプロジェクト管理できる発注者へ。日本年金機構と特許庁の取り組みは、政府の調達改革を占う。システム発注は変わりつつあるが、個人情報の漏えいを起こすなど改革は道半ばだ。

 2018年3月、年金機構はマイナンバーなど個人情報の入力を委託した国内業者が中国の別の業者に業務を再委託し、一部の加入者情報が漏洩した事実を明らかにした。事態を受けて、政府は年金機構に対しマイナンバーを使った情報連携を停止した。年金機構は2015年5月にも外部から標的型攻撃メールを受け125万件の個人情報を流出させている。

 一方で、年金機構はシステム調達の改革にも取り組んできた。こちらは一部機能が安定して稼働するなど、成果が出始めてきた。注力したのはベンダーへの丸投げから脱却し、ベンダーの実力を正しく評価するなど発注者としての能力を高める取り組みだ。

 こうした成功体験を作りながらも、業務委託先を適切に管理できていなかった。年金機構に必要なのは、丸投げ脱却という改革を組織の隅々まで広げていくことだ。

巨大システム、10年で移行

 年金機構のシステム調達改革は過去の計画頓挫が発端だ。前身の旧社会保険庁は2006年に年金記録システムなどの刷新計画をまとめたものの、非現実的な内容だったため計画が2年以上中断。その間、いわゆる年金記録問題が発覚し、2007年に社会保険庁改革関連法が成立。2010年に社保庁は解体、年金機構が設立された。それに合わせて発注体制の見直しを迫られた。

 同様にシステム調達改革に取り組んでいるのが特許庁だ。2006年に特許庁が基幹系システムの開発に指名した東芝ソリューション(TSOL、現東芝デジタルソリューションズ)は特許業務の知識が浅いにも関わらず、特許庁は要件定義などの役割を放棄し、開発が頓挫した。

 失敗を踏まえ、2つの政府機関は2013年以降に同じような改革の道を歩んでいる。骨子は大きく4つ。段階移行方式、外部人材の登用などによる発注者側の体制強化、システム開発に必要な文書化の推進、技術点重視のベンダー選定への転換――である。

 段階移行方式は巨大システムを一度に開発・稼働させる従来型と違って、業務や機能の単位に分けて段階的に開発・稼働させる方式だ。10年を超える長期計画を立て、安定稼働を確認しながらじっくりとシステムを切り替えていく手法に舵を切った。

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