AIやIoTなどブームが来てから「人材不足」を叫ぶのでは遅すぎる。自らブームを予測し、先んじて人材を育てない限り、不利な立場での競争を強いられる。日本ならではの人材発掘モデルを打ち立て、新たな土俵で勝負したい。

表 米国の「大統領科学技術諮問委員会」などによるIT分野の主要な提言
ブームの前に人材を育てる
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 「日本のIT人材育成における最大の問題は、ブームを先読みして人を育てるのではなく、ブームが来てから育てようとする点だ」。国立情報学研究所(NII)の佐藤一郎副所長はこのように語る。「米国は10年以上前の2007年時点で、IoTブームを予見し、必要な人材を育成し始めていた」(佐藤副所長)。

 米国は大統領科学技術諮問会議(PCASTなど)が1980年頃からコンピュータサイエンスの重要性を提唱。多くの米大学が電気工学科などを縮小し、コンピュータサイエンスの学部を立ち上げた。日本は遅れること10年。1990年後半からコンピュータサイエンスの拡充に乗り出した。

 だが当の米政府は2007年にコンピュータサイエンス重視の方針を転換した。PCASTは中国やインドの大学がコンピュータサイエンスの人材を大量に育成し、従来のままでは競争力は維持できないと分析。サイバー空間と現実空間が融合するCPS(Cyber-Physical System)分野の産業が興ると見越し、「ITと機械」「ITと法律」「ITと医療」など複合領域で専門を持つ人材を育成すべきと提言した。後にIoTや自動運転、医療AIなど新たな産業領域を生み出すきっかけとなった。

 日本における科学技術政策の司令塔である総合科学技術・イノベーション会議が、CPSと同じ概念の「Society 5.0」を提唱したのは2016年1月。同年6月に経産省はビッグデータ、IoT、AIなどを担う先端IT人材が2020年には約4万8000人不足すると試算し、重点的に育成する重要性を訴えた。

 だが、既にブームが訪れたテーマについて政府が人材不足を訴えても、育成は間に合わない。「日本が遅れて追従しても、米国が有利な土俵で苦しい戦いを強いられる」(佐藤副所長)。次の産業を切り拓く人材は、日本ならではの方法で発掘し、育てるほかない。

 政府が主導する日本ならではの人材育成モデルとして、成果を生んでいる事業が実は2つある。経産省傘下の情報処理推進機構(IPA)が18年近く続けている「未踏事業」と、総務省が2014年から始めた「異能vation」だ。

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