乗ると元気になるヒコーキ、宇宙でロボット遠隔操作―。ANAグループは「そこまでやるか」と思うような、大胆な挑戦に乗り出している。中核となるのは、中長期的な視点で新規事業を検討する専門組織だ。

 「ANAは何によって破壊されるのか。想像するとLCCやドローン、宇宙船、アバターなど可能性のあるものは様々だ。ならばそれらに破壊されるのを待つのではなく、自社で破壊的イノベーションを手掛けていこう」。

 中長期的な新規事業の開発を担う戦略部門、デジタル・デザイン・ラボ(DDラボ)を創設した理由について、責任者であるANAHDの津田佳明チーフディレクターはこう説明する。DDラボは2016年4月の設立当初はANAの一部門だったが、2017年にANAHDに移管され、副社長直轄の組織となった。収益性などを過度に気にせず、自由な発想ができる部門との位置付けだ。

 DDラボのメンバーは14人で、案件によって現場社員が加わる。目標や予算などを定めず、メンバーでブレーンストーミングを重ねて共感を得られたテーマについて、2~3人のチームでアイデアを形にする。現在のANAグループで実現可能な範囲で形にしつつ、そこから事業内容を深掘りしたり収益性を検討したりして、段階的に将来の破壊的イノベーションにつなげていく。

時差ボケ解消に挑む

 DDラボで進行中のプロジェクトの1つが「乗ると元気になるヒコーキ」だ。第1弾として、欧米などへの旅行時に多くの人を悩ませる時差ボケを軽減するスマホアプリを試作した。

図 「乗ると元気になるヒコーキ」の開発中の画面
「乗ると疲れる」の解消に挑む(写真提供:ANAホールディングス)
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 ANAグループ社員が出張時に使うなどして実用性を検証している。アプリに搭乗便を登録すると、日本と現地との時差を踏まえて搭乗数日前から起床時刻や就寝時刻、食事のタイミングなどを調節するよう促したり、機内での過ごし方をアドバイスしたりする。

 「当初は(集中力を高め、ストレス軽減などに効果があるとされる能力開発手法である)マインドフルネスを基に何かできないかと試行錯誤して悩んでいた」。乗ると元気になるヒコーキプロジェクトの担当で、2016年7月に空港部門から社内公募で異動してきた小野沢綾花氏はこう振り返る。

 悩んだ小野沢氏だったが、ANAHDの大橋洋治相談役が15年ほど前に描いていた「乗ると元気になるヒコーキ」のアイデアを知り、公衆衛生が専門の米大教授や睡眠改善プログラムを手掛けるベンチャーなどから協力を得てアプリを作り上げていった。

 今後はアプリを乗客向けに無償提供することを目指す。その後は機内で健康診断を受けたり、空港のラウンジの環境を乗客が体調管理しやすいように整えたりしていきたいと意気込む。

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