なぜなぜ分析には正確な情景描写が欠かせない。曖昧な文章を書く人は大抵、物事の捉え方が大ざっぱだ。ミスの原因を突き止めたければ、まず表現力を磨こう。

 なぜなぜ分析がうまくできない。的確な再発防止策を導き出せない─。そう嘆く人にとって、今回取り上げるテーマは非常に重要である。

 トラブルが起きたときの情景描写や「なぜ?」の文章を、どれだけ正確に書けているかという話である。なぜなぜ分析の成否は、言葉の表現に大きく左右される。

 ヒューマンエラーの原因追究をするうえで、事象や「なぜ?」の記述の上達は必要不可欠だ。そこで、これまでの連載で伝えてきたことを一度整理してみる意味で、なぜなぜ分析における「表現力」について、2回にわたって触れてみよう。

 何か問題が起きたとき、原因を的確に見つけようと思ったら、まずは物事を緻密に捉える力が求められる。すなわち「観察力」だ。

 ぼんやりとしか事象や周囲を見ていなかったり、いい加減な捉え方で「なぜ?」を繰り返していたりすると、ミスの原因を正しく見極めることはできない。日々の現場観察は非常に重要な訓練になる。

 観察力がないと、的外れな方向に原因追究が進んでしまいやすくなる。すると最悪の場合、「誤認逮捕」につながってしまう。

 あらぬ疑いをかけられて、ミスが起きた原因は「君の××のせいだ」と決め付けられたりしたら、当事者はたまったものではない。

 私はなぜなぜ分析の指導をするうえで、トラブルの事象や「なぜ?」の表現、つまり文章に非常にこだわっている。それは何も、国語の話をしているのではない。

 正確な表現でないと、誤った方向に再発防止策の検討が進んでしまうと分かっているからだ。それを未然に防ごうとしている。

言葉一つで分析者の発想が偏る

 なぜなぜ分析は用いる言葉一つで、参加者の発想が偏ったものの見方に強く引っ張られてしまうことがよくある。これでは、なぜなぜ分析がうまくできなくて当然だろう。

 では、私の言う表現力を高めるにはどうすればよいのか。まずなぜなぜ分析を始める人は、物事の観察力を高めなければならない。

 現場で起きていることを単に眺めている人は、ぼやけた表現しかできない。事象や「なぜ?」の文章をよく見ると、その人の観察力のレベルが分かるものだ。それくらい、表現にその人の観察レベルがはっきりと表れる。

 人の表現力と観察力は、表裏一体の関係にあるといえる。そう考えると、なぜなぜ分析がうまくできない人は、物事の観察力が低いと言わざるを得ない。それが文章に如実に表れてしまう。

 「自分は観察力が低いんだな」などと落ち込む必要はない。逆説的に聞こえるかもしれないが、なぜなぜ分析で必要になる最低限のポイントを知り、そこを集中的に鍛えることで、観察力は十分高められる。心配はいらない。

 要は、文中で表現すべき項目を覚えておけば、現場のどこを観察すればよいかが自然に分かってくる。それを理解できれば、観察の抜けや漏れを相当減らせるようになる。

 物事を文章で表現する場合、「5W1Hをきちんと押さえて書け」とよく言われる。それはなぜなぜ分析でも同じである。

 しかし私は、これだけでは原因追究には不十分だと考えている。もっと正確に言うなら、5W1Hを普段よりも、もう一歩踏み込んだ表現で具体的に書く必要があると理解してほしい。典型例を紹介しよう。

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