社会的意義が高いビジネスコンセプトは多くの共感を生む。買い手と売り手、社会の三方が満足するビジネスは長続きする。「三方メリット分析法」を使い、新たなビジネスモデルの発想法を学ぼう。

 「西部課長、高齢化が進む地域で交通会社が生き残るにはどんな企画を立てればよいのでしょうか。何か良いアイデアはありませんか」

 システム企画室の岸井雄介は始業前に自席で雑誌を読んでいる経営企画課長の西部和彦に聞いた。

 「突然だな。今度は交通会社のビジネス企画でも手伝っているのか?」

 「はい。当行商圏の七姫子市(ななひめこし)で路線バスやタクシーを運営する『北近畿バス』が事業継続の危機でして…。七姫ニュータウンの居住者が高齢化し、バスやタクシーの利用者が減っているんです」

 「あそこは高度成長期に大量の家が建てられ、一気に人口が増えたはずだ。現在は高齢化が進んでいるらしいな」

 「北近畿バスの専務とうちの企画担当役員が大学の同窓らしく、七姫ニュータウンを魅力的にするMaaS(Mobility as a Service)企画の支援を依頼されたようです。路線バスやタクシーを使って、高齢者のサービスを創成できないかと役員に言われました」

 「高齢者とMaaSは相性良く見えるがハードルもある。コストを利用者だけに負担させるとうまくいかないぞ」

 「課長もそう思いますか。一緒に検討している山端さんに企画を説明したら『サービス実現の方法が甘い』と言われてしまって…」


 岸井雄介は35歳、西日本の地方銀行A銀行に入行以来システム開発に従事し、現在はシステム企画室の課長補佐である。最近A銀行が買収したFinTech子会社F社の企画部と兼務になり、さらにグループ横断的検討プロジェクトのメンバーになった。

 西部和彦は37歳、A銀行でシステム企画の仕事を長く担当し、多くの仕事を成功させてきたエース人材で、岸井の大学の先輩でもある。出向していたITコンサルティング会社から復帰し、多くの仕事を成功させた貢献が認められ、経営企画課長に昇進した。

 岸井は現在、新規ビジネス企画課と一緒にMaaSの企画を検討している。MaaSは情報通信技術を活用して自家用車以外の交通手段による移動を1つのサービスとして提供することだ。

 A行の商圏である七姫子市は、高度成長期にベッドタウンとして栄えた。市の中心部に私鉄のターミナル駅があり、そこから路線バスで20分のところに七姫ニュータウンがある。ニュータウンの通勤者が都市部に通う際は自宅から路線バスに乗って駅まで行き、駅から私鉄を使って都市部に通っていた。しかし現在は住人が高齢化して都市部に通う通勤者は減少。路線バスの採算が課題となっていた。

 丘陵地にある七姫ニュータウンは坂が多く、バスの停留所まで歩くことを嫌がる高齢者が多い。しかも免許を返納する高齢者が増え、近隣のショッピングセンターに行くのが困難といった不満も出ている。

 そこで北近畿バスはA行の企画担当役員に相談し、地域の高齢者向けに買い物の足を確保するサービスをMaaSで実現しようと考えた。この検討の担当になったのが、新規ビジネス企画課の山端久美子担当課長とシステム企画室の岸井である。岸井は鉄道会社や他地域のMaaSの実証実験状況を詳細に調査し、山端担当課長に説明した。


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