客を集める商材を設計するには、非日常を味わえる経験価値が欠かせない。集客という効果を早く得られるよう、商材の準備に時間やコストをかけないことも重要になる。ターゲット顧客のニーズを満たし、かつ「安く、早く」提供できる商材の設計法を学ぼう。

 「西部課長、商材が乏しい地域に客を呼び込む良いアイデアはありませんか?当行商圏の檜上川町(ひのかみかわまち)はこれといった集客施設が無く、客あたりの消費額も少なく、このままでは町の発展が期待できません」

 システム企画室の岸井雄介は始業前に自席で雑誌を読んでいる経営企画課長の西部和彦に聞いた。

 「檜上川町か。あそこは里山地域で、確かに観光資源と言えそうなものはないよな。今度は里山の集客を企画しているのか?」

 「実は企画担当役員が檜上川町出身で、親交のある現町長から地域創生策を依頼されたようです。檜上川町は江戸時代に商業地として栄え、町内には漆喰(しっくい)造りの蔵がいくつも残っています。山陽の『蔵の町』や関東の『小江戸町』のような観光名所にできないかと言われています」

 「でもな、蔵の町や小江戸町のように町全体を観光施設にするには、膨大なコストと時間がかかるぞ」

 「やはり課長もそう言いますか…。一緒に検討している関美さんからも同じ事を言われました。江戸時代の蔵を生かした地域創生策を説明したら、『現実的な商材提供になっていない』って言うんです」


 岸井雄介は35歳、西日本の地方銀行A銀行に入社以来システム開発に従事し、現在はシステム企画室の課長補佐である。最近A銀行が買収したFinTech子会社F社の企画部と兼務になり、さらにグループ横断的検討プロジェクトのメンバーになった。

 西部和彦は37歳、A銀行でシステム企画の仕事を長く担当し、多くの仕事を成功させてきたエース人材で、岸井の大学の先輩でもある。出向していたITコンサルティング会社から復帰し、多くの仕事を成功させた貢献が認められ、経営企画課長に昇進した。

 岸井は現在、新規ビジネス企画課と共同で、A銀行の商圏にある檜上川町の観光や物販収入を増やす地方創生企画を検討している。

 関西の地方銀行であるA銀行の商圏は近年大幅に人口が減り、地域ビジネスは縮小傾向である。そこでA銀行は、特産品の開発や観光資源の活用を通じて海外からのインバウンド客や国内の観光客を呼び込む振興策に取り組み、数々の成果を上げていた。

 これを知った檜上川町の町長は、古くから親交のあるA銀行の企画担当役員を訪ね、集客施設の乏しい同町への集客と商業活性化プランの立案を依頼。役員は新規ビジネス企画課に検討を指示した。

 この検討の担当になったのが、新規ビジネス企画課の関美担当課長とシステム企画室の岸井である。岸井は他の地域の地域活性化状況を詳細に調査し、関美担当課長に説明した。


 「岸井補佐、檜上川町の地域創生に向けた集客商材の検討状況はどうか。どのような観光施設、商業施設、宿泊施設を用意すればいいのか、詳しく教えて欲しい」

図 現実的な商材になっていないプレゼンの例
「低コスト」と「ニーズの充足」を両立させる商材を設計する
[画像のクリックで拡大表示]

この先は有料会員の登録が必要です。「日経コンピュータ」定期購読者もログインしてお読みいただけます。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら