顧客特性と売り場が合っていない店舗は、顧客の心をつかむことができない。常識にとらわれた店舗設計のままでは、競合との価格競争に巻き込まれ埋没してしまう。「反常識分析」を通じて、顧客の特性に合い、かつ競合と差異化した店舗を設計しよう。

 「西部課長、我々が融資している地元の中堅ホームセンターチェーン『ムギリ』の売り上げ減が止まりません。打開のアイデアはないでしょうか…」

 システム企画室の岸井雄介は、喫茶ルームでコーヒーを飲んでいる経営企画課長の西部和彦に聞いた。

 「ムギリか…。軽い安全靴や長靴、ファッション性が高いレインウエアなど商品のセンスは業界一だよな。でも、大手と比べると規模が小さい分、低価格戦略で攻められるときついかな」

 「そうなんです。ムギリの地方店は競争力があるのですが、都市部の郊外型店舗は大手競合店の低価格戦略のあおりをうけて、売り上げが減っています。ムギリは創業者が麦の卸業としてスタートしました。その後、2代目社長が1970年頃に米国を視察し、ホームセンターという業種があることに感動し、日本で始めました。特徴のある商品を強みに成長してきましたが、近年は都市部郊外の大規模店で苦戦しています」

 「なるほど。ところで、岸井と組んだムギリ担当の行員は何と言っている?」

 「新規ビジネス企画課の浮島担当部長と共同で検討していますが、『顧客特性と売り場が合ってない』って言われています」


 岸井雄介は35歳、西日本の地方銀行A銀行に入社以来システム開発に従事し、現在はシステム企画室の課長補佐である。最近A銀行が買収したFinTech子会社F社の企画部と兼務になり、さらにグループ横断的検討プロジェクトのメンバーになった。

 西部和彦は37歳、A銀行でシステム企画の仕事を長く担当し、多くの仕事を成功させてきたエース人材で、岸井の大学の先輩でもある。出向していたITコンサルティング会社から復帰し、多くの仕事を成功させた貢献が認められ、経営企画課長に昇進した。

 岸井は現在、新規ビジネス企画課と共に、A銀行の商圏である北近畿で1970年代から事業を続けているホームセンターチェーン「ムギリ」の業績拡大策を検討している。

 北近畿で創業したホームセンター「ムギリ」は当初、地方部で農業や漁業、林業の従事者向けに専用商品を企画・製造し、順調に店舗を拡大した。その後は都市部の郊外店を拡充し、現在は全国に100店舗強を展開している。

 ムギリの特徴は付加価値型商品だ。通常の半分の軽さの安全靴「かるわざ」や、軽くて蒸れない長靴「天使の長靴」などが、農業や漁業、林業の従事者を中心に圧倒的な人気を誇ってきた。

 地方のビジネスだけでは業績拡大に限界があるため、20年前からは都市部郊外に大型店舗を開設し、一般消費者向けにも販売を始めた。郊外型店舗においても独自アイデア商品を企画・製造し、他社と差異化してきた。

 だが、ホームセンター業界は合併による資本集約が進み、トップ企業数社が低価格戦略を仕掛けている。このため、規模で劣るムギリの郊外型店舗事業は縮小しつつあった。このためメインバンクのA銀行が業績拡大を支援することになった。

 この検討を担当するのが、新規ビジネス企画課の浮島担当部長と、システム企画室の岸井である。岸井はホームセンターの商品戦略、店舗戦略などを調査し、浮島担当部長に説明した。

この先は有料会員の登録が必要です。「日経コンピュータ」定期購読者もログインしてお読みいただけます。今なら有料会員(月額プラン)が4月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら