人間が本来備えているとされる「レジリエンス(回復力)」。大災害に何度も直面する中で、企業もその力を手にしてきた。コンビニ最大手と鉄道最大手の回復力に学びたい。

 大規模災害に見舞われた時代――。平成を振り返ったときに、多くの人の記憶にこう留められるかもしれない。

 死者・行方不明者6000人を超える地震を2度も経験した時代だ。それらを通じ、日本の災害対応力はどこまで進化したのか。生活に密着する企業におけるBCP(事業継続計画)の歴史をひも解くと、災害対応の絶え間ない改善と創意工夫が見えてくる。

「現場に電話をかけるな」

 全国に張り巡らせた店舗網こそ、災害時の情報把握に生かせるのではないか。セブン-イレブン・ジャパンが店舗のUPS(無停電電源装置)の稼働状況を活用して被害エリアやその状況を把握する取り組みを始めたのは、2007年7月の新潟県中越沖地震がきっかけだった。元々は開発元のNECとコールセンターが把握していた情報だったが、それを災害対策本部と共有。配送や製造計画の効率化を実現した。

セブン&アイ・ホールディングスは店舗を中心とした情報把握に注力する
(写真提供:セブン-イレブン・ジャパン)
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 それでも予期せぬ混乱は起きた。2014年2月14日に関東地方一帯を襲った大雪で、物流を担う配送センターの一部が打撃を受けた。交通網が麻痺(まひ)し、配送センター周辺の除雪が行き渡らず、トラックが商品を運べない事態に陥った。国道や県道、それぞれ管轄エリアが違うこともあり、どの道路が除雪されているかなどの情報が一括で取得できない状況だった。

2018年7月の西日本豪雨の災害対策室
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 この経験から、店舗網のみならず配送網まで網羅する必要性を痛感。店舗からのデータも対策チームが直接把握できるようにすべきだと考えるようになった。「災害発生時は現場は大混乱に陥る。現場の優先度は安全確認と復旧だ。本部が現場に電話して状況を聞くのではなく、現地の情報は極力自動で取得すべきだと感じた」(セブン-イレブン・ジャパンの西村出システム本部システム企画総括マネジャー)。

 そうして2015年に「セブンVIEW」を完成させた。店舗の電源管理システムや配送トラックの車載端末の情報を自動的に集約して地図上に表示するシステムだ。停電、回線遮断、計画閉店など店舗の状況を色で表現する。トラックは30分間の移動距離が50メートル以下だった場合、「異常」として赤く表示される。

開発した「セブンVIEW」。画面は北海道胆振東部地震直後のもの
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 セブンVIEWの構築を決めたと同時に、同社として初めて「Google Cloud Platform」の使用を決断した。深夜早朝に起こることも少なくない災害対応において、場所や端末を選ばずに情報を参照できる利便性を重視した。地図やストリートビューなどのサービスを自社開発しなくてもすぐ使える迅速性とコストの安さ、災害時に有効なオートスケールも評価し、導入を決めた。

 改善は続く。今後注力するのは予測だ。例えば大雨による洪水や大雪による積雪によって、どれくらいの渋滞がどこに発生するか。その予測ができれば、配送ルートの組みなおしや代替工場の準備が可能になる。結果、店舗営業の早期正常化につながる。すでに複数の大学などと開発を進める。

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