企業の最優先課題は「新しい何か」を考え、始めることだ。そうしたイノベーションを後押しする構造変化が5点ある。無関係に見えても5点を意識すれば気付きがあるはずだ。

 企業にとって最優先の課題を挙げるとすれば、新しいことを興す、すなわちイノベーションになるだろう。経営者も事業部門も情報システム部門も、できるかどうかは別にして「何かをしなければ」と考えているし、株主や顧客、取引先からそうした要請がある。したがって立場を問わず、市場あるいは顧客に注目しなければならない。顧客に新たな体験を提供することこそ、イノベーションだからだ。

 日経BP総研は2019年1月から『100のブルーオーシャン』と呼ぶリサーチ活動を進めてきた。80人の研究員が今後伸びていく分野を100件探し、2030年の市場規模を推定する取り組みである。集まった100件を見渡すとイノベーションを興す構造変化が5点、見えてきた。

変化(1)生存からQoLへ

 人は生きるだけではなく「QoL(クオリティー・オブ・ライフ)」を求める。何をもって生活や人生の質向上とみなすか、人によって異なるものの、幸せ、健康、貢献などに関する価値観ないし認識の変化が起こっている。

 自分を超えた何かへ貢献したいという思いから、NPO(非営利団体)で活動したり社会起業家を目指したりする若者が出てきている。稼ぐことも必要だが、それだけが目的ではない。国際連合がSDGs(持続可能な開発目標)としてまとめた17の目標を見ると、幸せや安全がないがしろにされているなら経済を成長させたところで意味がない、という反省が込められている。

 健康に限っても生誕、予防、医療、介護、終活に至るまで、様々な課題があり、ITを使って課題達成を狙うスタートアップが登場している。健康へのこだわりはコストを増やしたり社会の負担になったりする場合もあるが、イノベーションを生む広大な分野であることは間違いない。

変化(2)有形から無形資産へ

 2017年10月に経済産業省が公表した『持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会報告書』に次の記述がある。「企業がイノベーションを生み出し企業価値を高めるために、施設や設備等の有形資産の量を増やすことよりも、経営人材も含む人的資本や技術、知的財産等の知的資本、ブランドといった無形資産を確保し、それらに投資することが重要になってきている」

 この報告書によれば、米国S&P500(米国に上場する主要500銘柄の株価指数)に入っている企業の市場価値において無形資産が占める割合が年々高くなっており、2015年には市場価値の87%を無形資産から得ていた。

 日本の無形資産投資比率は欧米より低いという。人、知的財産、ブランドへの投資がもっと増えるはずでそこにイノベーションの機会がある。

 QoLに関わる取り組みは人への投資につながるが、それ以外にも人への投資は多々ある。個人情報もまた無形資産であり、一生のデータを丸ごと保存するライフログという取り組みがある。個人情報の扱いについて議論が続いているものの、ライフログのようなデータの利用と情報セキュリティーの確保の双方でイノベーションの機会が出てこよう。

 仕事のやり方を変え、付加価値をどう高めていくか、いわゆる「働き方改革」も無形資産への投資に入る。ITがらみでは採用や人材の配置と評価を支援する「HRテック」が注目されている。

 どこで働くか、場所は次第に問われなくなり、家や地元にいる人が増え、地域や地方のコミュニティーが復権する可能性がある。仕事をどうこなし、生活をどう充実させていくのか、セルフマネジメントが重要になる。

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