アーキテクトには抽象化能力、利他の心、当事者意識が必要だ。顧客に資する事業の本質を把握してこそ、未来の企業像を描ける。自力で自分の仕事をやり抜く姿勢も欠かせない。

 世界の組織と連携し、お互いが再利用できる成果物を作り、それをオープンにすることで、新たな価値を創造できる。こうしたオープンアプローチを進めるにあたっては、どのような価値をどう提供していくのか、組織の将来像を設計しなければならない。そのための有効な手法がエンタープライズアーキテクチャー(EA)になる。

 以上はオープン標準の策定と認証を手掛けるグローバルな非営利組織The Open Groupの藤枝純教日本代表(一般社団法人CRM協議会会長を兼務)からの提案である。2019年4月4日号から本欄でオープンアプローチとEAの効果、世界の動向、必要性、成功条件、疑問点、信頼性確保や顧客体験改善のやり方を連載してきた。10回目の本稿ではまとめとしてオープンアプローチとEAを推進するアーキテクトが備えるべき3条件を示す。

表 オープンアプローチとエンタープライズアーキテクチャーに関する10回の記事内容
何よりもアーキテクトが必要だ
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本質を把握する抽象化能力

 「何よりもまず抽象化能力が必要」と藤枝氏は指摘する。アーキテクトは事業の仕組みに加え、所属先や外部の組織の構造と関係を確認し、将来の姿を設計する。事業も組織も複雑であり抽象度を上げて考えないと新たな全体像を描けない。抽象度を高め、事業や組織の本質を把握することで設計情報など成果物の再利用が可能になる。

 抽象化の一例として「The Open Group Architecture Framework(TOGAF)」が持つ「エンタープライズコンティニューム」という考え方を紹介する。TOGAFはThe Open Groupが無償公開しているEA設計手法で、コンティニューム(連続体)はTOGAFを使って設計ないし開発した成果物を分類する枠組みを指す。

 エンタープライズコンティニュームにおいては設計情報などの成果物を「ファウンデーション」「共通システム」「業種別」「組織固有」に分ける。ファウンデーションは最も抽象度が高くあらゆる組織が参考にできるもの、共通システムはそれより具体的で多くの組織が再利用できる何らかのシステムである。さらに具体的にしていくと業種別の設計情報になり、最終的に特定組織に固有な設計情報になる。

 EAの取り組みにあたってはファウンデーションや共通システムに分類される既存の設計情報を参照あるいは流用しながら次第に具体化していき組織固有なアーキテクチャーを設計する。既存の設計情報がみつからなかった場合、「自組織の機能のうち業種共通にできるものはあるか」などと再利用を考えつつ設計し、情報を蓄積していく。

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