企業も一つのシステムであり設計が必要だ。だが「企業設計」は分かりにくく日本でなかなか進まない。しばしば出る疑問7点への回答をまとめた。

 これまで7回にわたり、「オープンなアプローチ」とそれを支える「エンタープライズアーキテクチャー(EA)」について説明してきた。オープンな標準の策定と認証を手掛ける非営利組織The Open Groupの藤枝純教日本代表によれば、前者は「世界の組織や人が連携し、再利用できる成果物を作り、公開すること」であり、後者は「目的を持つ組織(エンタープライズ)の構造設計(アーキテクチャー)」を指す。藤枝氏はEAを「企業設計」と訳す。

企業設計抜きでは混乱を招く

 残念ながら日本においてはどちらの取り組みも進んでいるとは言い難い。特にEAは分かりにくく、構造設計がないまま、企業や情報システムが作られ、混乱を招いている。混乱を少しでも抑えるように本欄読者から寄せられた疑問を中心に解答をまとめてみた。

疑問1.オープンアプローチになぜEAが必要か

 情報システム関係者からするとオープンアプローチと聞いて思い浮かべるのはオープンシステムやオープンソースソフトウエアだろう。共に仕様や実装形態が「公開」されている成果物を「再利用」する取り組みである。その際、どこにどの成果物をどう再利用するのか、システム全体の見取り図と進め方の手順をまとめた設計書ないし青写真が欠かせない。それがEAである。情報システムは組織活動のために用意するわけだから組織(エンタープライズ)活動の設計書も必要になる。

疑問2.EAは経営手法か、開発手法か

 アーキテクチャーという言葉からどうしても開発や構築の話に聞こえてしまうが、EAは企業や事業の設計なので経営手法である。EAの説明を聞いたり学んだりした情報システム関係者が「これで情報システムを作れない」とつぶやくことがあるがそれは半分正しい。半分というのはEAだけでシステムは確かに開発できないが、EAのような取り組み無しで開発しても意味がないからである。

 経営手法である以上、本来は社長室や経営企画室といった部署がEAの音頭をとることが望ましいがIT(情報技術)関連の経験が皆無では辛い。「システムが作れない」と言わず情報システム部門やIT企業が社長室や経営企画室を支援し、EAに関与してほしい。

疑問3.EAは終わった話ではないのか

 情報システム関連のベテランでこういう感想を抱く方がいる。残念なことに日本の実情はその通りである。10数年前、経済産業省が電子政府構築の一環としてEAを推進しようとしたが「既に終わった話」になっている。

 失敗した理由は「業務・システム最適化」という正しい方針を出したものの実際の活動は現行のシステムの詳細記述に終始してしまったことだ。参画した担当者やIT企業は「開発手法」ととらえてしまい、目指すべき価値を明確にして最適化を進める、という根本のところが抜けていた。ただしやり方を間違えたからといってEA自体が終わったわけではない。

疑問4.EAのフレームワークとは何か

 The Open Groupは「The Open Group Architecture Framework(TOGAF)」を無償公開しており世界各国の政府や企業が利用している。だが日本の場合、「アーキテクチャーのフレームワーク」と言われると抽象語が重なり理解されにくい。TOGAFは組織がEAを作り、維持していく標準的な活動を示し、その活動をライフサイクルとして管理できるようにしたものである。「EAを使いこなすにはこういう活動と管理が必要」という枠組みを示しているだけで「こういう風にEAを書く」という表現手法までは規定していない。

 したがってTOGAFを学んだ人が「これだけでEAを書けない」と悩むことがあるがそれも半分正しい。何らかの表記方法を選び、それとTOGAFを組み合わせることになる。ただしTOGAFのような枠組み抜きでいきなり表記してもそれでは電子政府のEAの二の舞いになる。

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