中長期の価値追求にエンタープライズアーキテクチャー(EA)は不可欠だ。EAの中で価値を生むビジネスやデータの論理モデルを設計する。モデルがあってこそIT(情報技術)を使いこなせる。

 「日本企業の経営者にビジネスの計画書や製品・サービスの設計書があるかと問うと当然あると全員が答える。ではビジネスや製品・サービスから得られる価値とそれを生む理屈を計画書や設計書に明記してあるか、価値が得られたかどうかを検証しているか、と尋ねると明確な答えが返ってこない」

 グローバルなオープン標準の作成と認証を担う非営利組織The Open Groupの日本代表でグローバル情報社会研究所(ReGIS)の社長、藤枝純教氏は日本企業の計画や設計の問題を提起する。情報システム責任者にも次のように同様の問いが向けられる。

  • 保有する情報システムのそれぞれについて、ビジネスに与える価値を仕様書や設計書に明記しているか
  • 価値について経営者やビジネス責任者、現場担当者が議論し、合意したか
  • 価値に基づいて情報システムに優先順位を付け、開発や保守をしているか
  • システムの価値を検証し、期待通りではなかった場合、手を打っているか

価値を見いだし、設計に盛り込む

 上記の問いに答えるには、経営者、ビジネス責任者、現場担当者、情報システム責任者が議論し、価値を見いだし、合意を形成し、計画を立て、ビジネスや情報システムを設計するといった一連の取り組みが求められる。

 有力な候補は「エンタープライズアーキテクチャー(EA)」を描くことだ。The Open GroupはEAを記述する標準手法である「The Open Group Architecture Framework(TOGAF)」を公開している。EAは中長期に目指す目的を持つ組織(エンタープライズ)の構造設計(アーキテクチャー)である。ここで言うアーキテクチャーは構成要素の仕様、構成要素間の関係、そして設計の原則と手順を含む。

 いわゆる「攻めの経営」として顧客体験(カスタマーエクスペリエンス、CX)の充実、製品の売り切りからサービス提供への移行、人や成果物の共有(シェアリング)、デジタルビジネスへのトランスフォーメーション(DX)などが取り沙汰されるが「EAはCXやDXなど全ての前提」(藤枝氏)になる。

 攻めの経営によってどのような価値を顧客に提供できるかを検討し、ビジネスモデル(何をする必要があるか)やデータモデル(どのような内容を管理しなければならないか)を設計し、アプリケーション(どんなプロセス、フローが必要か)やテクノロジー(どのようなサポートインフラが必要か)についても決めていく。

図 エンタープライズアーキテクチャーが必要となる理由
設計が無ければ何もできない
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