「オープン」なやり方によって価値を創造できる。例えば知財を自ら公開し、世界各地にいる他者と共有する。自分の境界を決めずオープンに議論する姿勢が求められる。

 「オープンなアプローチは20世紀が生んだ最大の発明。新たな価値を創造するために、オープンとは何か、どう取り組むのか、今一度考えてはどうか」

 グローバル情報社会研究所(ReGIS)の藤枝純教社長はこう呼びかける。藤枝氏は1961年、日本IBMのシステムズエンジニア(SE)になった。大規模情報システムの設計や開発を指揮した後、CSKに移り新規事業を担当、複数のベンチャー企業を設立した。1996年に独立しReGISを創業して以降、コンサルタントとして活動。並行してオープン標準の作成と認証を担う非営利団体The Open Groupの日本代表や、顧客中心主義経営を研究・推進するCRM協議会の会長を務める。60年近く様々な動きや技術を見てきた藤枝氏が最重要と言う「オープン」についてこれから数回、考えていきたい。

オープンなアプローチとは何か

 オープンはごく普通に使われる言葉だが英語辞典「Merriam-Webster」を引くと形容詞だけで20もの用例が並ぶ。筆頭には「having no enclosing or confining barrier」「accessible on all or nearly all sides」とある。壁や境界がなく、何かに近づけ、入手できる状況を指す。岩波英和辞典によるとオープンの対象になる何かは有形の場合と無形の場合がある。

 本連載では藤枝氏が言う「オープンなアプローチ」を次のように定義する。「世界の組織や人が連携し、再利用できる成果物を作り、それを公開すること」。国や組織という「壁や境界」を越えてグローバルに連携し、成果物に誰でも「近づけ、入手できる」ようにする。「成果物」は有形のハードウエアでも無形のソフトウエアでもよい。しばしば言及されるシェアリングエコノミーやオープンイノベーションはいずれもオープンなアプローチに基づく。

 オープンなアプローチには何らかの標準(スタンダード)を伴う。規則や仕様を用意し、それに従えば連携や再利用が可能になる。標準の設定にもオープンなアプローチを採る。つまり「世界の組織や人が連携し、再利用できる」ように「作り、それを公開する」。

 こうしたアプローチを藤枝氏は評価する。「利益を追求する資本主義を採り、俺のものは俺のものだと知財の権利を訴え、しかも自己主張が強い個人主義の米国においてオープンの動きが広がったのは必然だったのかもしれないが、やはり驚くべき発明だった」。

 なぜ受け入れられたのか。何と言っても新たな価値を創造できることが大きい。自分だけ、自部門だけ、自社だけで考えても限界がある。「多様なステークホルダー(関係者)が集まり、社会の問題解決に何をすべきか、企業であれば顧客を中心にしてどう活動するか、と議論し全体最適を追求することで新たな発想が生まれる」(藤枝氏)。

 価値創造にIT(情報技術)や情報システムが必須の時代である。かねてより「オープンシステム」という言葉があった通り、ITが抱える問題にもオープンなアプローチは有効である。

 組織内に乱立する情報システム群をつなぐことでシステム内に閉じ込められていたデータに「近づけ、入手できる」。「世界の組織や人が連携し、再利用できる成果物を作り、それを公開する」典型例であるオープンソースソフトウエアを使えば、独自に作るよりも低コストでソフトを使える。API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を公開すれば組織外の情報システムと連携しやすくなる。

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