わくわくして前向きに取り組む、それが成功につながる。そのためには、やる気が出る目的や目標を決めることだ。指示されたからこなすという姿勢ではうまくいかない。

 何かに取り組む際、心躍る目的を考え、それに向かっていこうと思える目標を立てる必要がある。

 こう書くといかにも書生論であり、「現実はそう甘くはない」とつぶやく読者がおられるだろう。だが現実が厳しいからこそ、その中で仕事を続けるために、どこまで実現できるかどうかは別として何らかの理想を掲げたほうがよいのではないか。「それができたら素晴らしい」と思って仕事をすると、あれこれ工夫をするようになるし、困難な場面においても諦めなくなるはずで、目的や目標に着実に近づいていける。

 逆に「おそらく達成できるのはこの程度まで」「命じられた仕事だからこなそう」という姿勢で取り組むと「この程度」ないし「命じられたこと」すらやり遂げられないかもしれない。予想していなかった何かが起こったとき、「これではもう進めない」あるいは「対処の仕方を指示してほしい」ということになり、能動的に動けなくなってしまう危険がある。

「足かせを外せ」と言われても

 「そうなったらうれしい」とわくわくさせるような理想は否定文では描きづらい。ここで否定文とは「そうした問題を残してはならない、解決すべきだ」といった言い方を指す。一例が昨年の本欄で触れた「レガシーシステムは維持に金がかかる上に経営の足を引っ張るお荷物だから一刻も早く一掃すべきだ」といった言い方である(2018年5月10日号『レガシー刷新を急ぐな まず遺産「相続」の計画を』)。

 2018年9月に公表され話題になった経済産業省の『DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』の簡易版に既存の情報システムに関して次の記述がある。

 「ITシステムが、技術面の老朽化、システムの肥大化・複雑化、ブラックボックス化等の問題があり、その結果として経営・事業戦略上の足かせ、高コスト構造の原因となっている『レガシーシステム』となり、DXの足かせになっている状態(中略)が多数みられる」

 「DXを進める上で、データを最大限活用すべく新たなデジタル技術を適用していくためには、既存のシステムをそれに適合するように見直していくことが不可欠である」

 前半の問題提起はその通りだとして、「足かせを付けたままでは駄目だ」と叱られても、どういう素晴らしい状況になるかを思い浮かべてからでないと外す気になりにくい。組織にとっては足かせかもしれないが関係者にとってはそのままでも何とかなるからだ。

 引用の後半は「DX」のためだと言っているが抽象的過ぎる。DXレポートを読んでも「DX」の定義は「参考」として書かれているだけで今ひとつ明確ではない。デジタル技術を使って事業や組織を変え、何か新しいことをするという意味らしい。

 現場の技術者の中には古い技術を使った「既存のシステム」を捨て「新たなデジタル技術」を使えると聞いただけで、わくわくする人がいるかもしれない。だが、事業の担い手が同じように思うとは限らない。

 「前向きな目的・目標」と言われたとき、「それはそうだが、情報セキュリティーの確保や法規制ないし制度変更に合わせた情報システムの改修など何が何でもやらないといけない仕事も少なくない」と受け止めた読者もいるだろう。

 情報漏洩は防がないといけないし法や規則は守らないといけない。だが「これをしてはならない」「決まったことだからやれ」と強制されるばかりでは技術者も事業の担い手も面白くない。表向きの報告内容だけを整えてお茶を濁す形式主義に陥りかねない。

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