ICT(情報通信技術)によって新たな社会基盤が確立した。そこには人と人のつながり、情報、人々の行動が含まれる。新社会基盤が事業を、そして産業を変えていく。

 「これから世の中や自社が所属する産業界はどうなっていくのか」

 これは経営者と専門家の双方の関心事である。そこで日経BP総研はICT(情報通信技術)によって変わる産業群の10年後の姿を展望した報告書『メガトレンド2020-2029 ICT融合新産業編』を2019年12月末に発行した。

 報告書は2分冊で第1分冊に社会や産業、人の活動を今後変えていく重要なトレンドをまとめた。続く第2分冊で重要トレンドとICTによって形成される新たな社会基盤の姿を示し、その上で起こる「融合」、すなわち新事業や新産業の誕生、既存の産業の変化や産業連携を予測した。以下では「ICTによる新社会基盤」に関する記述を抜粋しつつ報告書の骨子を紹介する。

新たな社会基盤が変化を起こす

 これから先10年の変化のドライバーは新社会基盤であり、テクノロジーそのものがドライバーであった従来よりも大きな変化を引き起こす。

 人々はスマートフォンのようなネットワークに接続する高性能コンピューターを持ち歩き、Webにアクセスし、つながっている。このつながりの上に各種の仕事(業務プロセス)が乗る。こうした多層構造の上に様々な仕事の情報が発生する。ICTの仕組み、業務プロセス、仕事の情報が一体となったものが新社会基盤である。

 新社会基盤の上で情報の収集、分析、発信が繰り返され、その影響を受けて新しい産業や事業モデルが創出され、産業同士の融合が進む。こうした基盤は一夜にして現れたものではない。モバイル通信、インターネット、クラウドコンピューティング、機械学習などが登場、普及し、その上に業務プロセスと情報が段階的に蓄積されてきた。

 基盤はすでに出来上がったと言ってよく、2020年以降の10年間、5G通信の本格化などテクノロジーの革新がさらに進み、それと共に新社会基盤が社会、産業、人を変えていく。

 報告書の第2分冊をまとめるにあたって、様々な産業ごとに新社会基盤がもたらす変化を先取りしているとみなせる事例を100件以上集め、変化が起こる仕組みを分析した。

 ICTを包含した新社会基盤の確立によって、あらゆる「もの」と「こと」が「つながる」。そして様子が「みえる」ようになる(可視化される)。個人、集団、産業、国家、社会の動きを情報として把握できるようになると、情報の交換、相互評価、選別も同時に起こる。

 ある情報を得た個人や集団が強くなると個人や集団におけるバランスが変わり、それを受けて社会そして産業の在り方も変わっていく。変化は摩擦を引き起こすが多様な個人や集団が「ぶつかる」ことで新たな情報が発生し、それがまた社会そしてその中にある産業を変えていく。

 つまり情報に駆動され、物事が変わっていく。情報はバーチャル(現実そのもの)でリアル(現実)の制約がない。情報を媒介とすることで顧客や市場のニーズに即した臨機応変な協業や事業創出が可能になる。

 新社会基盤が既存の産業や企業に与える変化を図にまとめた。異なる産業同士でお互いが「みえ」、「つながり」、「ぶつかる」ようになる。

 新社会基盤を介して顧客の状態や生産・サービス工程の様子を把握でき(センシング)、その情報を顧客や業務担当者がみられるようにする(ビジュアライゼーション)ことで業際を越えた連携(コミュニケーション、コラボレーション)が進む。

 異なる産業同士の間に相互作用(インタラクション)が働き、産業融合と産業再定義をもたらす。この変化は大きく既存産業や社会とのあつれきを生むが、多様な人々が関わることで新産業が「そだつ」解決策が見いだされていく(コクリエーション)。解決策も新社会基盤の一部になり、さらなる産業融合を後押しする。

図 ICT融合で新産業が生まれる流れ
「ぶつかる」ことが大事/出所:メガトレンド2020-2029 ICT融合新産業編(日経BP)
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