オフィスの移転時によく見られる「設定の流用」。だが、意味を理解せずに流用すると痛い目に遭う。移転準備中に起こった通信障害の事例を紹介する。

 企業のネットワークで意外によくあるのが、事業所や事務所の移転に伴う対応作業だ。作業の期日が決まっていることに加え、業務への影響を最小限にとどめるため、現行機器の設定をそのまま流用するケースが多い。しかし、個々の設定の意味を理解せず安易に流用すると思わぬトラブルを招くことがある。今回は事業所の移転時に流用した設定が起因となって発生した通信障害の事例を紹介する。

なぜか移転前に通信断

 A社はある事業所の移転を決め、プロジェクトチームを立ち上げて準備を進めることにした。同社のサーバーはデータセンターに設置してあり、各事業所はWAN経由でアクセスする。このため、事前に移転先の事業所にWAN回線を引き込み、LANを含めたネットワーク環境を構築。あとは移転当日にPCを順次つなぐことで業務をすぐに再開できるようにする計画を立てた。移転対応の作業は慣れたものだった。

 早速、移転先の事業所のレイアウトを確認しながら必要な機器の洗い出しなどを実施。機器の搬入時期も決め、LANの構築から開始した。やがてWAN回線も開通し、データセンターへの疎通試験やシステムの利用試験も済ませた。作業の山場は越え、すっかり安堵していたところに問題が発生した。翌日に電源工事を控え、全てのネットワーク機器の電源をオフにしたときだ。移転元の事業所がデータセンターと通信できなくなった。移転元の事業所に慌てて戻り、調査を始めた。

図 A社で発生したトラブル
事業所の移転準備中にWANの通信断を招いた
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 真っ先に疑ったのはWANルーターである。ハードウエアに故障はなかったが、WAN回線と接続したポートが停止していた。当該ポートを有効にすることでデータセンターとの通信はすぐに復旧できた。ひとまず安心となったが、問題は当該ポートがなぜダウンしたかである。WANルーターの状態やログなどを確認しても特に異常は見当たらず、通信事業者に問い合わせても当該時刻にWAN回線の障害やメンテナンスなどはなかった。

 そこでトラブルが発生した当時の状況を振り返ってみることにした。移転元の事業所で通信できなくなったのは、移転先の事業所で全てのネットワーク機器の電源をオフにした直後だった。通常は考えにくいが、これが影響した可能性がある。この前提で改めて思案していると、ある設定にたどり着いた。

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