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同意の下で個人データを収集し、活用を促す「情報銀行」が始動する。三菱UFJ信託銀行や電通子会社などが参入を表明し、認定制度も始まる。データの主導権をIT大手から取り返し、活用も広がる一石二鳥となるか。

 情報銀行への参入を表明したのは2018年10月1日時点で三菱UFJ信託銀行、電通テック、ITベンチャーのDataSignの3社だ。さらに50以上のIT関連団体を束ねる日本IT団体連盟が情報銀行を営む事業者を審査・認定するサービスを年内にも始める予定で、10月末に説明会を開く。情報銀行に参入する企業はさらに増えそうだ。

図 情報銀行の枠組みと参入を予定する企業
データを持つ企業と活用したい企業を仲介
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 情報銀行の機能は大きく2つある。1つはネットサービスなど複数の企業に分散していた個人データを、個人が主体的に一元管理できるよう収集する機能。もう1つは、集めた個人データを活用先の企業に提供する機能だ。本人の同意・制御の下で条件に合う企業だけに渡す。企業は個人データをマーケティングやサービス開発に活用し、個人はその企業から対価などを得る。金銭や商品の割引クーポンなどのほか、個人データを生かしたサービス提供などの構想がある。

 情報銀行を推進するのは政府だ。米IT大手などに対抗できるデータ流通の枠組み作りを狙う。2018年6月に総務省と経済産業省が共同で認定指針を公表した。情報銀行と同様の構想は欧州やアジアなどでも進むが「日本は事業化で先頭集団にいる」(DataSignの太田祐一社長)。

消費者の理解とニーズの開拓が鍵

 2019年度に参入予定の三菱UFJ信託銀行は、メニューの1つとしてセンサーを内蔵した運動靴を使った歩行データを収集・提供する計画だ。歩行の特徴から高精度に個人を特定できるほか、疲労など健康状態も把握できる。

 電通テックは2018年秋以降、企業から受託してきたマーケティングや会員組織の運営を企業の同意の下で段階的に情報銀行に移行させる。幅広い業態から集めた個人データを統合し、分析結果と合わせて企業に提供する。

 DataSignは検索や通販など各種ネットサービスの個人データを統合管理できるサービスを9月3日に発表、これを情報銀行に発展させる。他の情報銀行に自社技術を供与するビジネスも狙う。

 課題は消費者の理解とニーズの開拓が進むかだ。便利だと感じるサービスが増えない限り、個人はデータの開示に同意しないとの見方は多い。IT大手が大量の個人データを集められたのは、対話支援や写真の共有など便利なサービスを無料で提供してきたからだ。情報銀行を営む企業にも、個人に「使いたい」と思わせる新サービスの開発力が問われる。

出典:日経コンピュータ、2018年10月11日号 p.12 「参入相次ぐ情報銀行、勝算は問われるサービス開発力」を改題
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。