欧州SAPのERPソフトをオンプレミスで動かす2000社を狙え―。クラウド大手による国内ユーザーの争奪戦が激しくなっている。2025年に「SAP ERP」の標準サポートが切れるため、ユーザー企業が対応を迫られている事情が背景にある。AWSやAzureに対抗する形でIIJなど国内勢も参戦。SAP ERP向けの新サービスなどで火花を散らす。

 「ERPを今後、どのように進化させていくのか。この点を考えた末に新しいデータベース(DB)やクラウドへの移行に踏み切った」。火災報知器などの防災製品を開発・販売するホーチキは、欧州SAP製のERPパッケージ「SAP ERP」で構築した基幹系システムの基盤をクラウドに移行した。稼働から2年半たつが不具合などはなく順調に動作しているという。

 ホーチキだけではない。SAP ERPが稼働する基盤をクラウドに移行する企業は着実に増えている。旭硝子はSAP ERPを使って構築した販売や物流、会計などのシステムをオンプレミス(自社所有)の環境から米アマゾン・ウェブ・サービスの「Amazon Web Services(AWS)」に移行した。住友化学やHOYAなどもSAP ERPの稼働基盤をクラウドに移している。

 動きの背景には2つの理由がある。

 1つはユーザー企業のクラウドに関する捉え方の変化だ。AI(人工知能)やIoT(インターネット・オブ・シングズ)といった新しい領域でクラウドを利用するのは当たり前になった。いわゆる「クラウドファースト」の考え方が普及し、ユーザー企業は「次は基幹系だ」と前向きになっている。

 もう1つは基幹系システムを構成する主要なソフトウエアのサポート切れが迫っているためだ。ユーザーはソフトの更改対応を余儀なくされる。代表例がSAP ERPと業務アプリケーション群「SAP Business Suite」(以下、両方をまとめて「SAP ERP」とする)だ。いずれも標準サポートが2025年に終了する。それまでに新ERPの「S/4HANA(エスフォーハナ)」に移行するなど何らかの対処をしなければならない。

図 SAPユーザーの考え方の変化とサポート終了を迎える関連ソフトウエア
クラウド移行の追い風が吹く(写真:Getty Images)
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 この状況をチャンスと見てユーザー獲得を虎視眈々と狙うのがクラウドベンダーだ。クラウド大手から見ると顧客獲得の商機がオンプレミスの基幹系システムに広がってきた格好だ。AWSや日本マイクロソフトなどのクラウドベンダー各社は基幹系のクラウド移行を念頭に、大規模システムを稼働できるサービスを追加したり、基幹系で頻繁に利用されてきたミドルウエアをそのまま移行できるサービスを用意したりするなど、サービスの拡充を急いでいる。

図 SAPユーザーのクラウドへの移行ステップ
まずはERP基盤をクラウドに(写真:Getty Images)
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