日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)需要を追い風に、米セールスフォース・ドットコムが自己変革に挑んでいる。日本好きで知られるマーク・ベニオフCEOは日本へのさらなる投資を表明。低い認知度が成長の足かせになりかねないとの危機感も背景に、日本発のビジネスモデルのグローバル展開を目指す。

2019年4月に開催した「Salesforce 創業20周年スペシャルイベント」で、マーク・ベニオフ会長兼CEOは日本事業の強化を表明した(写真提供:セールスフォース・ドットコム)
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 「日本への投資を加速する。デジタルトランスフォーメーション(DX)に関する日本の潜在市場は大きい。DX支援を強化して、日本でナンバーワンのIT企業を目指す」。

 2019年4月、東京・丸の内。米セールスフォース・ドットコム創業者のマーク・ベニオフ会長兼最高経営責任者(CEO)は、同社の創業20周年記念イベントでこう宣言した。1999年設立のセールスフォースが最初の海外拠点に選んだのは日本。2000年に日本法人を設立した。現在の社員数は約1500人だ。ベニオフCEOは記念イベントで、2024年までに最大で2000人増員し3500人規模にする方針を掲げた。営業やアライアンス、カスタマーサポートといった分野が対象だ。

 事業拡大に伴い、世界で8番目、アジアで初めての「セールスフォース・タワー」を2021年に開設する計画も表明した。東京・丸の内にある22階建ての「日本生命丸の内ガーデンタワー」オフィスゾーンを全て借り切る。

キリンHD、「360に共感」

 同社が日本で推し進めるのは人員や拠点といった量の拡大にとどまらない。事業の質も転換する。目指すのはクラウドサービスのベンダーから、DXの担い手への転身だ。CRM(顧客情報管理)や開発環境のクラウドサービスの販売やサポートに加え、新規事業創出や事業変革に向けたコンサルティングや企画立案を支援する。

 2025年の崖。経済産業省は2018年9月に発表したリポートで、老朽化した基幹システムやIT人材不足が日本企業のDXを阻む一因と指摘した。日本びいきで知られるベニオフCEOは日本の事業拡大を通じて、DX推進を後押しする考えだ。

 セールスフォースにDX支援を依頼した1社がキリンホールディングス(HD)である。同社はマーケティング活動の改革に取り組んでいる。Webサイトや電子メール、ソーシャルメディアといったITツールと、店舗やイベント、工場見学などとの連動を強化して顧客との接点を増やす。ITツールで集めたデータを基に割引キャンペーンを実施したり、同キャンペーンで量販店を訪れた顧客にお礼メールを送って再来店を促したりと、顧客ごとのマーケティングを展開しブランドへのロイヤルティーを高める。

 新たなデジタルマーケティング戦略を実行するため、同社は2020年10月をめどにセールスフォースの「Marketing Cloud」を使って基盤システムを刷新する。会員コミュニティーWebサイト「MY KIRIN」やネット通販サイト「DRINX」などの650万人分の会員データも移行する。

 「カスタマー360に共感した」。キリンHDの宮入一将デジタルマーケティング部主査はこう語る。カスタマー360とはセールスフォースが掲げるDX支援のコンセプト。全ての顧客接点を通じて、最適な内容とタイミングでサービスを提供できるようにする。

 「セールスフォースが新しい機能や技術をどんどん追加すると期待している」(宮入主査)。スマートフォンやソーシャルメディアが広がり、企業が仕掛ける新たなキャンペーンや流行の話題はまたたく間に拡散し陳腐化する。マーケティング基盤システムが足かせにならないよう、顧客の変化に合わせて柔軟に機能を追加したり改修したりできるセールスフォースのサービスは有用とみる。

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