来店客の「顔」から年齢を推測し、お勧めの商品を提案する―。リアル店舗をまるでECサイトのように進化させる技術が広がっている。顔認識AIだ。カメラで店内の客の様子を撮影し、性別や年齢、気分などを推測する。将来、店員が客の顔色をうかがう必要はなくなるかもしれない。店舗運営やライブ演出、マーケティングでの活用例を追った。

図 顔認識AIの活用イメージ
顔の画像を基にAIが属性分析(写真提供:アロバ(カメラ上)、パナソニック(カメラ下)、日本マイクロソフト(人物左上、左下、右上)、アマゾン ウェブ サービ スジャパン(人物右下))
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 顔認識AI(人工知能)はカメラで撮影した画像を基に、AIで人の顔だけを認識して性別や年齢、感情などを推測する技術だ。顔認識AIを導入してデータに基づく店舗運営を実践する流通大手がある。九州を中心にディスカウントストアなど224店を展開するトライアルカンパニーだ。同社は2018年、福岡市の店舗にカメラを約700台取り付けて店内の様子を撮影し、映像を基にした顧客の行動分析などに乗り出した。

図 トライアルカンパニーが目指す「リテールメディア」の概要
顧客に合わせて広告を変える(注:トライアルカンパニーの資料を基に日経コンピュータ作成。写真提供:トライアルカンパニー)
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 「購入商品の約8割は店頭で選ばれる。AIなどの技術が発達したことで、顧客の購買心理をつかめるようになってきた」。持ち株会社のトライアルホールディングス取締役副会長でグループCIOを務める西川晋二氏はこう自信を見せる。

属性と売り上げの相関まで分析

 トライアルは顔認識AIを顧客の行動分析に使う。顔認識AIで来店客を検出し、性別や年齢を推定するのに加え、動線を分析する。顔認識AIのソフトウエアはパナソニックのグループ会社で、画像認識ソフトを手掛けるPUXが開発した。画像認識技術を組み合わせたパナソニックのカメラ管理などの基盤「Vieureka(ビューレカ)」を使って運用する。別途、映像を基に来店客がどの商品に触れたかを特定したり、棚に陳列した商品の売れ行きをつかんだりもしている。

 こうした取り組みによって来店客の属性に応じた移動範囲や滞在時間、売り上げとの相関などをより細かく把握できる。

 例えば30代男性をターゲットにしたはずの新商品が、実際には40代女性に最も売れた、あるいは関心を集めたといった情報を取得できる。メーカーは取得した情報を次のマーケティング施策に生かせる。分析結果は小売業向けのレポートツールで可視化し、店舗運営に役立てている。

 同社は顧客の来店前、来店中、退店後の3つの場面で接点を作る「リテールメディア」と呼ぶ取り組みを進めている。リテールメディアの流れは次の通りだ。

 まず来店前の顧客のスマートフォンアプリにクーポンを送る。店内ではベンチャー企業のRemmo(レモ)と共同開発したタブレット決済機能付きの「スマートレジカート」にお薦め商品のクーポンを発行する。さらに商品棚に取り付けたカメラが、棚の前で立ったり手を伸ばしたりする顧客の様子を撮影してAIで分析。棚の上部に備え付けたディスプレーに販促内容などを表示する。買い物を終えて店を出た顧客のスマートフォンアプリには次回の来店時に使えるクーポンを送って再来店を促す。

 同社はこのリテールメディアの流れの中に顔認識AIを組み込む計画だ。商品棚に取り付けたカメラに顔認識AIの機能を加えるソフトを自社で開発している。西川氏は「顧客が棚に近付くとカメラが撮影した画像から顔認識AIによって性別や年齢を推測し、広告の表示をふさわしい内容に変える機能を実装したい」と話す。

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