2018年10月、国土交通省が航空管制システムを刷新した直後にトラブルが続いた。本稼働した1日に拠点間で情報をやりとりできなくなり、旧システムに戻した。再稼働させた翌日にはサブシステムの1つに障害が発生して85便が遅延した。サブシステムを開発したNTTデータは本番データでテストせず、バグを見逃した。事態を重く見た国交省は新システムの再稼働を2018年末以降に延期する。

 「管制システムに不具合が生じたため、当便は出発を見合わせております」――。2018年10月10日午後5時半ごろから那覇空港ではあちこちの搭乗口からこうしたアナウンスが流れ始めた。空港内は運航再開を待つ観光客やビジネスパーソンであふれ返った。85便に30分以上の遅延が生じ、出発が約2時間半遅れた便もあった。

 航空便が発着できなくなったのは、国土交通省で沖縄エリアの航空管制を担当する神戸航空交通管制部の「統合管制情報処理システム」が午後5時23分に障害を起こしたからだ。混雑する空域では時速900キロメートル近い高速で航空機が数分おきに飛び交うなど、日本の空は過密状態。航空便を「交通整理」して空の安全を守る管制システムが機能していなければ「航空便を安全に運航できない」(大手航空会社)ため、運航を見合わせるしかない。

 神戸航空交通管制部は航空管制拠点の再編計画に伴い、トラブルの9日前の10月1日に発足し、統合管制情報処理システムは同日に本稼働を迎えたばかりだった。実は初日にもシステム障害が発生し、再編前の那覇拠点で使っていた旧システムに切り戻していた。10日の障害は初日のバグを修正して9日に再稼働した翌日の出来事だった。

 10日の障害は2時間後に復旧してバグもその日に直したが、稼働するたびにシステム障害が起こる事態を重く見て、国交省は10月15日に旧システムに切り戻した。同省の管制情報処理システム室は日経コンピュータの取材に対し、「新システム全体を再点検して、テストしたうえで2018年末以降に改めて再稼働させたい」と話す。

表 システム障害の経緯
本稼働から10日間で2度のシステム障害、再稼働を2018年12月末以降に延期
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10年越し、悲願の新システム

 国交省は2008年度から航空管制を支援する各種システムの全面刷新プロジェクトを進めている。全体が終わるのは2021年度の予定だ。各種システムのうち、航空路用の管制システムの第1弾がシステム障害を起こした神戸航空交通管制部の新システムだった。

 皮肉なことに全面刷新計画が持ち上がったきっかけもまた、システム障害だった。2003年3月1日に発生したシステム障害は欠航205便、遅延1462便につながり、「航空機の運航に多大な影響を及ぼした」(国交省の資料)。

 システム障害を受けて有識者などが再発防止策を取りまとめ、全面刷新に踏み出した。新システムは一部のサブシステムがダウンしても運航便のデータが消失しないようデータ構造を見直した。大規模なシステム障害や震災などに見舞われても最小限の航空管制業務を続行できるように管制部間でバックアップし合う体制も構築した。

 高まるインバウンド需要に備えて、日本の空で運航できる航空便を増やすためにシステムの拡張性も確保した。併せて、空域ごとに札幌と東京、福岡、那覇の4拠点で分担していた航空管制業務を2025年までに整理・集約する計画を立てた。新たな体制は地域ではなく高度で担当を分け、高度10キロメートル以上の高高度空域は福岡に、それ未満の低高度空域を東京と神戸に割り振る。札幌と那覇は廃止する。

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