大阪市は国民健康保険システムの不具合を公表した。2018年9月末のことだ。保険料の支払いが遅れた加入者に送る延滞金納付書の宛先を誤った。延滞者の個人情報が漏洩し、納付書を受け取った一部から誤って料金を徴収した。該当者は200人に1人。まれな事象だったために発覚が遅れた。原因は納付書を作成するプログラムの実装ミスとテスト漏れだった。

 「納付義務がないのに、延滞金の納付書を受け取った」。2018年9月19日、ある市民が大阪市生野区役所に連絡したことがきっかけで国民健康保険システムの不具合が見つかった。8日後の9月27日、大阪市は本来の送付先ではない保険加入者に誤って請求書類を発送したと公表し、個人情報の漏洩と料金の誤徴収が起こったと謝罪した。

 誤って送ったのは国民健康保険の保険料の延滞金納付書だ。国民健康保険の加入者は毎年6月から翌年3月までの10カ月間にわたり、毎月保険料を納付する。ある加入者が納付期限に保険料を支払わず、大阪市の督促に応じて遅れて保険料を支払ったとする。大阪市はその加入者に対して、延滞金を課すかどうかについて保険料の支払いルールを基に判断。課す必要がある場合は、延滞金納付書を加入者に送って支払いを促す。

 延滞金納付書には、宛先の住所と氏名のほか、延滞金の支払い義務がある加入者の氏名と支払額などが書かれている。大阪市は自身で管理する国民健康保険システムの不具合によって、一部の延滞金納付書を支払い義務のない加入者宛てに発送したことにより、延滞金の支払い義務がある加入者の氏名と金額が個人情報として漏洩した。さらに誤った納付書を受け取った一部の加入者は納付書に従って払う必要のない延滞金を支払ってしまった。

新旧の世帯主が混在

 冒頭の市民からの連絡を受けた区役所の職員は、国民健康保険システムの運用管理を担当する大阪市の福祉局生活福祉部福祉システム課に連絡した。

 同課が調べたところ「世帯主が変わった家庭に対して、宛先を誤って納付書を発送していた」(小島隆成福祉システム課長)と分かった。国民健康保険の保険料は世帯単位で支払う。世帯全員が保険に加入できるが、延滞金の支払い義務があるのは世帯主だけだ。そこで大阪市は延滞金納付書を世帯主宛てに発送している。

図 大阪市の国民健康保険システムで発生した延滞金納付書の宛先間違いの発生経緯
世帯主が変わったケースで不具合が
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 生野区役所に連絡してきたのは、新たに世帯主になったばかりの市民だった。前の世帯主が滞っていた保険料を支払った後に転居し、新たに世帯を引き継ぎ世帯主になった。こうした世帯主の引き継ぎは「高齢になった世帯主が老人ホームなどに入居することになり、家に残った配偶者や成人した子供が世帯主になる」といったケースで起こる。この場合、延滞金の支払い義務があるのは前の世帯主である。そのため延滞金納付書は、前の世帯主の転居先に発送すべきだった。しかし実際には新しい世帯主に送っていた。

 問題となった大阪市の国民健康保険システムは2017年1月に稼働した。それまで運用してきたCOBOLベースのアプリケーションの保守効率が悪化したため、2015年4月から2016年12月にかけて再構築を進めた。その際、延滞金納付書の作成に関する新機能などを含めて、業務アプリケーションをJavaで実装し直した。

 小島課長はここに問題があるとみて、国民健康保険システムの開発ベンダーであるNTTデータ関西に調査を依頼した。世帯主が変わった世帯に延滞金納付書を誤って発送していないかどうかを過去に遡って調べてもらうとともに、不具合の原因究明を求めた。

 NTTデータ関西が国民健康保険システムの稼働直後にまで遡って調べたところ、47人に合計79件の延滞金納付書を誤送していたと判明した。延滞金の請求額は合わせて53万6441円だった。47人のうち11人が受け取った納付書17件分の延滞金を支払っていた。納付額は合計4万400円だった。

 不具合の原因は小島課長の見立て通り、新たに追加した延滞金納付書の作成機能を担うプログラムにあった。このプログラムは保険料を遅れて支払った世帯主に対して延滞金が発生するかどうかを確認したうえで、発生する場合は延滞金を計算。延滞金納付書を作成する。納付書には延滞金の支払い義務がある世帯主名と支払うべき延滞金の額を印刷する。それらに加えて発送する宛先の情報として、支払い義務がある世帯主の氏名と住所を合わせて印刷し、窓付き封筒に入れて発送できるようにする。

 この過程で問題が発生した。納付書作成プログラムは、発送する宛先の住所と氏名のデータを一部間違えて取得していた。新たな世帯主の氏名と住所を印刷するようになっていたのだ。本来は変更前の世帯主の氏名とその転居先の住所を印刷すべきだった。一方で、延滞金の額については変更前の世帯主のデータを取得して正しく印刷していた。

 納付書を誤って受け取ったのは、世帯主を引き継いだ配偶者など身内に当たる人たちがほとんどだった。そのため、問題に気付くのが遅れたと推測できる。だが「前の世帯主が保険料の滞納を身内に隠していた」ケースはあり得る。「延滞金納付書に書かれた情報は個人情報であり、たとえ身内であってもそれが漏洩したことに変わりはない」と小島課長は認める。

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