沖縄戦について伝えるアーカイブサイトが休止し、再開の見込みが立っていない。沖縄県が7000万円以上の予算をつぎ込み2012年に開設していた。沖縄県は理由としてアクセス数の低下や予算減を挙げる。デジタルデータが増加するなか、資料価値のあるデータを国や自治体がどのように管理していくかという課題を突きつけた。

 「おかしいな」。東京大学大学院の渡邉英徳教授がWebサイト「沖縄平和学習デジタルアーカイブ(平和アーカイブ)」の異変に気づいたのは2018年4月ごろのことだ。

 同サイトは太平洋戦争末期の沖縄戦の記憶を未来へつなぐためのデジタルコンテンツを掲載しており、沖縄県が運営している。監修を務めた渡邉氏は折に触れてサイトにアクセスしていた。だが4月ごろからリンク切れになり、アクセスできなくなったという。この時点では「一時的に何かが起きたのかもしれないと考えた」(渡邉氏)。

 6月23日に再度アクセスしたところ、やはり閲覧できなかった。この時点で「本当におかしい」と渡邉氏は確信した。6月23日は1945年に沖縄の組織的戦闘が終結した沖縄慰霊の日に当たる。沖縄にとって象徴的な日に平和アーカイブにアクセスできないというのはあり得ないはずだ。

 2018年9月12日現在も、同サイトは閲覧できない状態が続いている。沖縄県は「早急に再開したい」と話すが、めどは立っていない。

 平和アーカイブは沖縄戦体験者の写真と証言を沖縄本土の地図とともに見られるサービスで、2012年6月23日に公開された。沖縄平和祈念資料館と沖縄公文書館などが提供した証言映像や当時の写真を米グーグルの「GoogleEarth」に重ね合わせて表示した。

予算7000万円以上で立ち上げ

 利用者は沖縄戦体験者20人の証言と182点の沖縄戦の写真や地図資料を、時間軸に基づき条件を絞り込みながら閲覧できる。1931年から1954年までに、体験者が本土や海外をどのように移動していったか分かる。説明は英語や中国語、韓国語など計6カ国語に対応する。沖縄県は「沖縄戦の歴史的教訓を、戦争を知らない世代へ情報発信する」のが狙いだとしている。

 沖縄のシステム会社であるokicom(オキコム)を中心としたジョイントベンチャーが2011年に開発を請け負い、渡邉氏は総合監修の役割で参加した。長崎県の「ナガサキ・アーカイブ」や広島県の「ヒロシマ・アーカイブ」といったアーカイブコンテンツを同氏は手がけており、白羽の矢が立った。沖縄の平和アーカイブは「182点の写真がいつどこで撮影されたのかを1つひとつ検証し地図に配置する作業が難しかった」と渡邉氏は当時を振り返る。

 沖縄県は2011年度に沖縄観光振興強化事業補助金を活用した国内誘客緊急対策事業の一部として、平和学習デジタルコンテンツ構築事業を推進。5408万1355円を予算化した。2012年度には「沖縄振興特別推進交付金を活用した平和学習デジタルコンテンツ整備事業」として2068万5525円を計上している。初期投資だけで計7476万6880円をかけた事業だ。

図「 沖縄平和学習デジタルアーカイブ」の画面例とサービス休止の経緯
沖縄戦の教訓を発信していた
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沖縄全土の地図に当時の回顧録を組み合わせ、時系列で表現した
(画像提供:沖縄県)
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