2019年5月1日、新元号「令和」の時代が幕を開けた。政府は情報システムへの影響を勘案して1カ月前の4月1日に新元号を公表したが、それでも対応漏れなどによるシステムトラブルが続出した。横浜銀行と北陸銀行、北海道銀行はATMに表示する振込日付を「1989年」と誤り、東京都世田谷区は区民への通知書に「平成3元年」と記載した。

 「官公庁と民間で情報システムに支障があったという報告は受けていない」。令和の時代が幕を開けた2019年5月1日午前9時過ぎ、菅義偉内閣官房長官は改元に伴うシステム改修について「安全宣言」を出した。

 宣言通り、世上をにぎわすような重大なトラブルは発生しなかった。だが100点満点とはいかず、子細に見ると改元日前後にトラブルが続いた。

振込予約日が「1989年」に

 コンビニエンスストアのATMを使って一部の銀行口座からお金を振り込む際、振込予約日がATMの画面や紙の利用明細に誤って表示されるシステム障害が2019年4月26日から30日にかけて発生した。振り込み自体は連休明けの2019年5月7日に実行される「予約扱い」となったが、画面や利用明細には平成元年である1989年の5月7日と表示された。30年前の日付が現れる不思議なトラブルだ。

 障害が発生したのは横浜銀行と北陸銀行と北海道銀行の地銀3行である。ローソンやファミリーマートのATMを使って3行の口座から、「モアタイム」に参加していない銀行の口座に振り込む際に、振込日の表示を誤った。モアタイムは24時間365日いつでも即時振り込みができる全国銀行協会のサービス。2019年5月7日時点で参加していないのはみずほ銀行などである。

 トラブルを起こした3行はいずれもNTTデータが運営する共同利用型の勘定系システム「MEJAR(メジャー)」を導入している。ただトラブルの原因は勘定系システムではなく、周辺システムにあった。

 勘定系システムとコンビニATMをつなぐ中継(ゲートウエイ)システムである。ゲートウエイシステムには日本IBMのソフト「FIG(Financial Institution Gateway)」を使っている。

 3行は2019年4月22日にMEJARの改元対応を済ませた。だが、トラブルが発生した2019年4月26日の時点でFIGには改元対応をしていなかった。

 10連休直前の2019年4月26日、銀行の窓口業務が終わった午後3時以降にコンビニATMで3行の口座からモアタイムに参加していない銀行の口座に振り込み操作をすると、実際に振り込まれる日は翌営業日である2019年5月7日となる。予約扱いになるわけだ。

 予約日をATMの画面に表示したり利用明細に印字したりするために、勘定系システムは予約日のデータをゲートウエイシステムに送る。関係者によれば、日付データはシステム内部で持つ西暦4桁を含む8桁を、元号の付かない和暦ベースの6桁に変換して送っているという。具体的には「2019年5月7日」は令和元年なので「01年5月7日」となる。

 この和暦データを受け取ったゲートウエイシステムは改元未対応だったため、「01年」を「平成元年」つまり1989年と解釈し、ATMに「予約日は1989年5月7日」と送った。3行はゲートウエイシステムの改元対応を2019年4月30日の夜に実施する計画だった。

 なぜ勘定系システムとゲートウエイシステムで改元対応のタイミングがずれたのか。根本原因は3行の改元対応の影響調査不足にあった。横浜銀行は「勘定系システムの改元対応は他の大規模なシステム開発の影響などを考慮して改元日前に実施したが、ゲートウエイシステムへの影響確認は十分ではなかった」(広報)と話す。

 3行は予定通りに改元対応を済ませ、令和が幕を開けた2019年5月1日に誤表記のシステム障害が解消したとWebサイトに掲載した。3行の行員がコンビニATMで振り込んで誤表記が無いと確認した。北陸銀行の場合はカードローン取引にも影響があったため、同取引についてもATMで操作して不具合の解消を確認した。

 3行によれば2019年5月7日の予約振り込みは全て正常に処理された。誤った日付を表示・印字した取引は横浜銀行が485件、北陸銀行が487件、北海道銀行が114件の合計1086件だった。
 ゲートウエイシステムにFIGを導入する銀行は3行の他にもある。だが3行以外ではトラブルが表面化しておらず、勘定系システムとゲートウエイシステムの改元対応にずれが生じないように取り組んだ可能性が高い。

 MEJARは3行以外に七十七銀行も使っているが、トラブルは発生していない。コンビニATMで振り込みサービスを提供していないからだ。

この先は有料会員の登録が必要です。「日経コンピュータ」定期購読者もログインしてお読みいただけます。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら