2019年3月末、電子マネー決済サービス「シンカクラウド」に障害が発生した。同サービスを使う全国8万カ所でSuicaなどによる決済がしにくくなった。このトラブルを含め8カ月で5回以上のシステム障害を発生させた。電子マネーの決済システムはキャッシュレス社会を支える金融インフラであり、より一層の安定稼働が求められる。

 トッパン・フォームズの子会社であるTFペイメントサービス(東京・新宿、以下TFPS)が提供している電子マネー決済サービス「Thincacloud(シンカクラウド)」で、決済不能になるなどのシステム障害が断続的に発生していた事実が分かった。

 日経コンピュータはTFPSが2019年4月1日に顧客企業に送った障害報告メールを入手した。

 報告メールによると、直近では3月29日から31日にかけて断続的にシステム障害が発生。シンカクラウドを導入している大手家電量販店や飲食店、遊技場、タクシーなどでSuicaやPASMO、iDなどの電子マネー決済がうまく処理できなくなった。具体的には「ICカードやスマートフォンを決済端末にかざしてから決済できるまでに時間がかかったり、時間をかけてもエラーが返ってきたりした」(ある導入企業)。

 同社の決済端末はヨドバシカメラやサンマルクカフェなど全国約8万カ所に設置されており、その全てが影響を受けた。店舗で商品を購入したり飲食したりした人は、レジで決済に時間がかかるか、現金など別の決済手段を使わざるを得なくなったという。TFPSはメール文面で顧客企業に「ご迷惑をお掛けし、申し訳ございません」と陳謝した。

 政府は「未来投資戦略2017」で、電子マネーなどのキャッシュレス決済を2027年までに4割に引き上げる目標を掲げている。総務省が4月に公表した調査結果でも、電子マネーを利用する世帯の割合は2008年の19.3%から18年は50.4%と2.5倍に伸びた。

 シンカクラウドのような電子マネー決済システムは名実ともに国全体の重要なインフラになりつつあり、障害が長引けば経済活動に甚大な影響を与えかねない。

期待を集めた新規事業

 TFPSの親会社であるトッパン・フォームズは凸版印刷のグループ企業だ。宅配便の送り状やクレジットカードの請求書の作成に加え、顧客からデータを預かって印刷、発送まで一貫して請け負うアウトソーシングで成長した。

 これらの「データ&ドキュメント事業」は現在でも売上高の約7割を構成する主力事業である。だがペーパーレス化の進展もあり、売り上げ、利益ともに減少傾向なのが現状だ。

 そうした状況の中で新たな収益源として力を入れていたのが電子マネー決済事業だった。「印刷事業は仕事の受注がないと収益にならないフロー型ビジネスだが、電子マネー決済はストック型ビジネス。ひとたび導入すれば安定的に手数料収入を得られる点で魅力的だった」(関係者)。

 11年に同事業をトッパン・フォームズから切り出す形でTFPSを設立。決済サービス企業としては後発だが、TFPSの株主でもあるヨドバシカメラなど大手企業に採用され、電子マネーの決済サービスの一角を占める企業として存在感を増していった。

 順調に成長した理由の一つに、端末コストの安さがある。

 店舗に置く決済端末はICカードやスマホが持つSuicaやiDなどの識別データを読み取るだけで、決済処理はしていない。ネットワーク経由でシンカクラウドにデータを送信して決済処理を完了させている。「シンクライアント型」、または「クラウド型」と呼ばれる決済方式だ。

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