厚生労働省のいわゆる「不適切統計問題」について、発生経緯が判明した。不適切な統計によって延べ2015万人分の保険給付金に誤りが生じた問題である。15年前に調査方法を変更した際、システム改修を怠った。統計担当部署のシステム担当職員が出力結果をチェックしていなかった。厚労省は正しい保険給付金を追加で支払うためのシステム対応に50億円を投じる。

 厚生労働省は2019年1月11日、同省が実施する「毎月勤労統計調査(毎勤統計)」において、過去に不適切な調査をし、誤った数値を出していたと発表した。内部調査によれば、不適切な統計調査は2004年1月分から2017年12月分まで14年間続いていたという。

表「 毎月勤労統計調査」の不正を巡る主な出来事
14年間にわたり必要な改修をせず
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 毎勤統計は統計法に基づく基幹統計の1つ。雇用や給与、労働時間について、毎月の変動を明らかにしている。厚労省は統計結果を基に雇用保険や労災保険、船員保険の給付額を算定しており、毎勤統計の誤りによって2004年以降の給付額も誤った。影響人数は延べ2015万人に上る。

 厚労省は給付額を再計算した。過剰給付分の返金を求めない一方で、過少分は追加で給付する方針だ。これに伴い、2019年度予算案を2019年1月18日に修正。不適切統計による影響額は約795億円に及んだ。

 影響が最も大きかったのは対象人数が延べ1942万人に上った雇用保険関連で約472億円だった。うち追加給付分は総額約276億円で、失業手当や育児休業給付金、介護休業給付金などとして給付していたはずのものである。

 追加給付のためのシステム改修や書類作成、現住所確認、郵送などの事務費も約177億円に上る。約3分の1に当たる約50億円は雇用保険給付システムの改修費用である。雇用保険は通常、事後に給付しないため、事後給付できるように改修する必要が生じた。

 2019年3月上旬時点では、通常国会で毎勤統計の不正問題が焦点になっている。厚労省の組織的な隠蔽・不正の意図や首相官邸の関与の有無が問われているためだ。不正の全体像は明らかになっていないが、2019年1月と2月に厚労省が公表した調査報告書と取材に基づき、情報システムの観点から問題点を整理する。

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