倉敷中央病院は2018年7月26日、主要なシステムが使えない事態に陥った。外来診療を終日取りやめ、少なくとも約2400人に影響が出た。主要システムが使えなくなったのはネットワークが全面ダウンしたからだ。前夜のSDN(ソフトウエア・デファインド・ネットワーク)への移行作業に漏れがあった。再現テストの準備に時間がかかり、原因判明までに2カ月ほどを要した。

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 「病院に着いてからシステム障害で外来診療を中止していると知って、別の日に予約を変更してもらった。こんなこともあるのかと驚いた」。岡山県総社市に住む主婦の渡辺節子さん(73)は倉敷中央病院で起こったシステム障害の影響をこう振り返る。

 倉敷中央病院は2018年7月26日朝、電子カルテシステムなど主要なシステムが使えなくなった。原因が判明しなかったため、午前8時過ぎに外来診療の中止を決定。救急患者の受け入れも取りやめるとした。

 この結果、外来予定だった患者ら少なくとも約2400人に影響が出たとみられる。予定していた手術も2割ほど実施できなかった。ネット上には「まさかのシステムトラブルで今日の診療ができなくなり、家に帰ってきた」といった患者の声が幾つも投稿された。

 倉敷中央病院は1923年創設で1100床超の病床数を抱える岡山県西部の中核病院である。2017年度の手術件数は1万3000件近くで、全国トップクラス。年間の救急患者は約6万5000人、単純計算で1日約180人が運び込まれており、地域医療に欠かせない存在だ。

 倉敷中央病院がシステム障害で外来診療を取りやめたのは初めてだった。情報システム部の藤川敏行部長は「今回の事象は起こってはならないこと。患者の皆様にご迷惑をお掛けして申し訳ない」と謝罪する。

仕様の理解不足があった

 ネットワーク障害は院内LANを切り替える前日夜からの作業中に起こった。ソフトウエア制御でネットワーク構成を柔軟に設定できる「SDN(ソフトウエア・デファインド・ネットワーク)」への刷新だった。作業手順に問題があり、想定外の処理が発生してネットワークの負荷が急激に高まった結果、ネットワークが全面ダウンした。構築を担当したNECと倉敷中央病院の双方に仕様の理解不足があった。

 倉敷中央病院は2017年から院内LANを段階的にSDNに切り替えてきた。院内LANは2011年から稼働しており、更新時期を迎えていたためだ。

 院内LANには医師や看護師などが使うパソコンのほか、コンピューター断層撮影装置(CT)など5000台規模の端末がつながる。「これだけの規模になるとネットワークの設定作業がとても多くなる。作業ミスによるネットワーク障害も起こりかねない。だからこそSDNを導入して、管理の手間を減らそうと考えた」(藤川部長)。皮肉にも、その移行作業中にネットワークが全面ダウンする事態を招いた。

表 倉敷中央病院で起こったネットワークトラブルの経緯
2カ月ほど原因を特定できず
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