「出羽守」という言葉をご存知だろうか。本来は律令制時代の出羽(山形県と秋田県に相当)の長官を意味し、「でわのかみ」と読む。今話題にしている出羽守はこれとは違い、何かにつけて米国などの事例を引き合いに出す人をやゆした言葉だ。

 「米国では企業がITを戦略的に活用し」などと語る人に対して「やれやれ、あの人は米国出羽守(米国ではのかみ)だよ」という具合に使う。特にIT関係者には、米国出羽守が大勢いるはずだ。今なら「中国では」を連呼する中国出羽守も増えているだろう。

 日本や日本企業の課題を議論する際に、外国の事例を持ち出すのは慎重でなければならない。米国や中国と日本では社会制度や文化など様々な前提が違うからだ。だが、きちんとした調査に基づく出羽守は重要だ。平成から令和に代わる10連休の直前の4月に、そんな思いを新たにした。

 同志社大学STEM人材研究センターが「世界と比べた日本の技術者の生産性と労働条件」と題するセミナーを東京で開くと聞き、聴講してみたのだ。技術者の給与水準などの比較調査と分析の結果が発表され、中身はなかなか刺激的だった。

 単純に日米で比較するだけだと、結果に驚きはない。システム開発や組み込みソフトウエア開発を担うソフトウエア技術者の給与水準を比較すると、21~30歳は日本が300万円台なのに対して米国は700万円台に乗る。両者とも年齢と共に上昇するが、米国が51~60歳で1400万円近くに達するのに対して、日本はようやく800万円だ。

 日米の差は大きいとはいえ想定通りだ。多くの米国出羽守から「米国ではソフトウエア技術者の社会的地位は高く、給与水準も高い」といった話を聞かされてきたからだ。だが、この比較にドイツでの給与水準を加えると、極めて興味深い結果となる。

「米国出羽守」ばかりでよいのか

 単純比較では、ドイツのソフトウエア技術者の給与水準は日本と大差がない。21~30歳でこそドイツのほうが200万円近く高いが、年齢が上がるとともに両者の差は縮小し、51~60歳でほぼ同水準となる。

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