積水ハウスは1万7000台のiPadを使い、社員の働き方改革を進めている。営業や施工の担当者は出先で活用、1カ月の平均残業時間を15時間減らした。アプリはアジャイル開発手法で内製し、その数は200種類を超える。

[画像のクリックで拡大表示]

 「情報を伝達するスピードが格段に速くなった」。大手住宅メーカーである積水ハウスの上田和巳IT業務部部長はiPad導入の効果をこう説明する。同社はiPadを1万7000台導入し、内勤を含む全社員に配布。建築現場にいる施工担当者がその場で図面データを閲覧したり、進捗管理データを入力したりできるような環境を整えた。その結果、施工担当者の1カ月当たりの平均残業時間を15時間減らせた。休日出勤も月平均で半日程度減った。

図 積水ハウスが進めるiPadの業務利用とその効果
iPadをフル活用し残業時間を削減(写真提供:積水ハウス)
[画像のクリックで拡大表示]

全社導入、経営層も後押し

 積水ハウスがiPadの導入を始めたのは約6年前の2013年春に遡る。当初から「社員全員に配布する」「利用率を100%にする」といった目標を掲げてきた。

 同社がiPadの採用を決めたのは、オフィス以外の場所で働く社員が多く、出先で手軽に使える情報機器が求められていたからだ。営業担当者は住宅展示場などで顧客に住宅商品を提案する。住宅の建築現場の施工担当者や完成した住宅の保守に当たるアフターメンテナンスの担当者は社外に出ずっぱりだ。「社員同士が効率よく情報を共有できるITインフラが必要だった」と上田部長は述べる。

 そこで注目したのがiPadだった。iPadを先行導入した他社の事例を知った当時の経営層からの後押しもあった。「iPadを業務で使い倒して成果を出すよう経営層から指示を受け、全社での導入を目指した」(上田部長)。

 2018年12月の時点で営業や設計、施工、総務など合計200種類以上のアプリが使われるようになった。例えば住宅のアフターメンテナンスの担当者は物件情報の閲覧アプリを活用している。iPad上でアプリを起動するとGPS(全地球測位システム)が取得した現在の位置情報に基づき、周辺地図を表示する。地図上には積水ハウスが手掛けた物件の位置が視覚的に示されている。担当者がこの中から訪問する物件をタップすると、物件情報を記した画面が開き、顧客情報や工事と契約に関する情報、物件の図面データなどを参照できる。

 iPadの導入前は、訪問先の情報が書かれた紙の書類や図面を担当者が毎朝事務所に取りに行く必要があった。iPadを導入してからは事務所に寄る必要はなくなった。訪問後の報告についても、以前は事務所に戻ってからパソコンに入力していたが、iPadの導入後は出先で入力が完了。「担当者は直行直帰できる」(上田部長)。

 2018年には住宅展示場に来た顧客のニーズを把握するアプリを開発した。アプリの画面には「家事をするときの室内の動線」「外観」「デザイン」など、顧客の関心が高いと思われるテーマが並ぶ。顧客にこの中から興味のあるテーマを選んでもらうと、そのテーマについて詳しい情報を表示する。営業担当者は顧客の関心に合わせた提案をしやすくなった。

この先は有料会員の登録が必要です。「日経コンピュータ」定期購読者もログインしてお読みいただけます。今なら有料会員(月額プラン)が4月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら