代々木ゼミナールは基幹システムを30年ぶりに刷新し、運用費を8割減らした。汎用機をクラウドに替え、COBOLアプリを超高速開発ツールでリライトした。コスト削減を果たしつつ、大学入試改革に向けて柔軟なIT環境を整えた。

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 この4月に晴れて大学に入学した新入生が入学試験のピークを迎えていた2018年2月、学校法人高宮学園が運営する大手予備校「代々木ゼミナール」の情報システム部門は受験生よりひと足早く「サクラサク」の吉報にわいた。約30年ぶりとなる基幹系システムの刷新を完遂したからだ。旧システムで使っていたメインフレームの電源を落とし、クラウドサービスと超高速開発ツールを組み合わせて構築した新システムを本稼働させた。

 4年前の2014年8月、代ゼミは全国27校あった校舎を7校に減らすなど事業の大幅な縮小を発表し、翌年にかけて実施に移した。経営強化を図るためにシステム部門のメンバーも半分に減らした。一方でシステムは従来のままだったため、相対的に保守運用コストが上昇。削減を迫られていた。今回の刷新でシステム運用費を8割減らし、アプリケーションの保守性も高めた。

 大学入試を巡っては、2021年春の入学から大学入試センター試験に代わって「大学入学共通テスト」が始まる。改革期を迎え、少子化も進むなか、ライバルの予備校との競争を勝ち抜くためにはITの活用が欠かせない。「身軽になった新システムで新しいサービスを次々と開発していきたい」。代ゼミの加藤建人情報システム部長はこう意気込む。

代々木ゼミナールの授業風景(左上)、東京都渋谷区にある本部校「代ゼミタワー」(右)
(写真提供:代々木ゼミナール)
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少子化と現役志向の増加が転機に

 代ゼミの基幹系は主に大学入試の模擬試験の運営と生徒情報の管理を担う。年に複数回ある模擬試験では、受験者の答案を素早く採点して集計・分析し、平均点や偏差値を印刷物として返却する必要がある。高校の団体受験であれば、学校ごとの平均点なども計算しなければいけない。

 答案のうちマークシート部分は代ゼミのマシン室にあるOMR(光学式マーク読み取り装置)で処理し、記述式の部分は人手による採点結果をパンチ業者がデータ化する。基幹系システムは両者を合わせて集計。成績表は複合機で印刷し、受験者や高校に郵送する。

 今回の刷新で、基幹系をクラウドサービス上に全面移行した。既にクラウド上に移行済みの申し込みシステムや成績照会システムと連携して動作する。オンプレミスで稼働する出席管理システムや財務システムなどともデータ連携する。

 模擬試験の業務を支えてきた旧来の基幹系は1980年代半ばにNEC製メインフレーム「ACOS」を使って構築した。アプリケーションはCOBOLで開発していた。事業縮小前の最盛期には1回の模擬試験を約10万人が受けた。センター試験の自己採点結果を代ゼミに伝えると志望校別の合否判定を返してもらえる無料サービス「センターリサーチ」は約40万人が使ったという。

図 代々木ゼミナールが構築した新しい基幹システムの概要
全国で開催する模擬試験を支える(写真、画像提供:代々木ゼミナール)
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 「出願先の決定に間に合うよう、センターリサーチは3日で返送する必要があった。集中する負荷を処理するにはメインフレームが不可欠だった」(加藤部長)。代ゼミはハードをファームウエアのバージョンアップなどのタイミングで更新し、アプリケーションを手直ししながら使い続けた。

 だが2014年に転機が訪れる。少子化に加え、浪人をしたくない「現役志向」の学生が増えたこともあり、高宮学園は代ゼミの事業を縮小した。20校の閉鎖に加え、模擬試験の回数を減らし、センターリサーチも廃止した。

 すると「メインフレームの処理性能が余るようになった」(同)。システム運用コストの高さが問題となり、経営陣はシステム刷新を情報システム部に指示した。早速、2015年4月に刷新プロジェクトが始まり、同年9月にはクラウドサービスに移行するとすんなり決まった。「BCP(事業継続計画)対策の必要性も考えると、自前でサーバーを置く選択肢は無かった」(同)。

 移行先に選んだのはビッグローブのIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)である「BIGLOBEクラウドホスティング」だ。加藤部長は「長年の付き合いでNECが代ゼミのインフラをよく理解していたため、NECから独立したビッグローブを選んだ」と話す。代ゼミはこれを機に印刷設備も刷新した。

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