デジタルを使った新サービスの立ち上げのために転職したものの、直面したのは混乱を極めるシステムとIT部門の現状だった。3年でIT部門を立て直し、いよいよデジタル変革(DX)に挑む。

 私がみらかホールディングスに転職したのは2016年のことだ。グループ企業のIT部門を束ねるIT本部で、デジタル技術を使って消費者向けに健康管理支援などの新サービスを企画・開発するのが入社の目的だった。

金子 昌司(かねこ・まさし)氏
1997年に慶応義塾大学大学院理工学研究科卒、三井物産を経て、2002年にノバルティスファーマに転職。スイス本社グローバルIT戦略マネージャーなどを務める。2016年みらかホールディングスに転職しIT推進部長、2017年にIT本部長、2019年4月より現職。(写真:山下 裕之)
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 ところが入社してみると、それどころではなかった。当社は2005年4月に、臨床検査薬の開発販売などを手掛ける富士レビオと、医療機関から臨床検査を受託するエスアールエルが経営統合して発足した。システムを統合しないまま、その後も企業買収を繰り返して事業規模を拡大したので、システムのあちこちで問題が起きていた。

 まるで冗談のような話だが、グループ企業ごとにインターネットドメインが異なるため、メールを出すために相手のところにわざわざ出向いてアドレスを聞いたりしていた。2つのグループウエアが並存したままだったし、社内ネットワークもグループ企業ごとに分かれていた。

 当時のIT部門は、利用部門から「何もやってくれない」と批判的に見られていた。だがIT部員の一人ひとりに面談すると、彼らの使命感は非常に強いと分かった。技術力も相当なものだ。

 例えば臨床検査事業は1日当たり約20万人分、計400万件に及ぶ検査データを扱う。データ処理件数は地方銀行に匹敵する規模だ。しかも毎日夕方から夜中にかけて数千万件ものデータ処理が集中する。システム障害が発生すれば医療機関の治療に影響してしまうので、決して失敗は許されない。IT部員たちは使命感と技術力で、システムを支えてきた。

 その一方で失敗を許さないマネジメントに抑圧され、自由な発想で働く感覚に欠けていた。自分の担当する仕事を完璧にこなそうとするあまり、「何もやってくれない」との烙印を押される結果になっていたわけだ。

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