地域住民の2000項目にわたる健康調査データを使って、産官学が連携して新事業を生みだすプラットフォームを構築した。世界でも類を見ないビッグデータを求めて40社以上が参画する。

(写真:陶山 勉)
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 ライオン、花王、イオンリテール、エーザイ、明治安田生命保険、シスメックス―。様々な業種の企業が、青森県西部に位置する弘前大学を日参している。ある企業は東京都内から片道3時間以上かけて訪れ、ある企業は青森に社員を常駐させている。なぜなら、そこにしかないものがあるからだ。

 それを「健康ビッグデータ」と関係者は呼ぶ。弘前大学は2005年から14年間にわたって毎年、弘前市岩木地区の20歳から高齢者まで約1000人の住民を対象に健康調査を実施している。参加者のほとんどは健康な住民だ。小中学生の調査も別途実施している。

 検査項目は2000種にも及ぶ。体格や体組成などの基礎的なデータ、体力測定結果、ゲノム解析データ、睡眠時間や食事内容などの生活活動データ、労働環境や家族構成といった社会環境データまで網羅し、分野を超えた分析が可能だ。「ここまで多項目にわたる健康ビッグデータは世界でも類を見ない」と、同データの活用を推進する弘前大学教授の村下公一は胸を張る。

 2013年、文部科学省が公募した「革新的イノベーション創出プログラム」によるCOI(センター・オブ・イノベーション)拠点の1つとして弘前大学の取り組みが採択された。岩木地区の健康ビッグデータを核に、産業界や自治体、大学、地域住民が連携しながら新事業を生み出そうというものだ。

 同プログラムに資金を投じて参画する企業は健康ビッグデータを使って弘前大学と共同研究ができ、知りたい項目を調査に追加できる。参画企業は40社を超え、既に事業化したプロジェクトもある。

「日本一の短命県」返上を目指す

 村下は弘前大学COI拠点の副拠点長を務める。拠点全体の戦略を考え、関係者を説得して実行する役割を担う。

 前職は青森県庁の職員だ。2011年、青森県は「青森ライフイノベーション戦略」を策定し、医療・健康・福祉を次世代の産業の柱とする方針を掲げた。村下は県の職員として取りまとめた。

 青森県の平均寿命は男女ともに全国最下位だ。「短命の原因には低所得もある。新産業を生み出して県民所得を向上させることが重要だ」と考え、国内外の大手医療機器メーカーと青森県の地元企業をマッチングさせるイベントを開催した。こうした実績を買われて「弘前大学の教授としてCOIプロジェクトを推進してほしい」と誘われた。

COI拠点開設当初は知名度向上のため全国を飛び回り、どんな小さな会場でも講演した(写真:陶山 勉)
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