NTTグループとしては異色の「農業」を手掛ける子会社を率いる。人手不足や高齢化に悩む地方の農業にIoTやAIを採り入れ、通信とは異なる形で「地方に欠かせないインフラになりたい」と意気込む。

(写真:陶山 勉)
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 NTT東日本は2019年7月、100%出資の子会社「NTTアグリテクノロジー」を設立した。「NTT東日本が新規事業の子会社を立ち上げるのは2011年以来のこと」(NTT東日本の井上福造社長)。8年ぶりの新規事業子会社が挑むのは農業分野、その陣頭指揮を執るのが酒井大雅だ。

 通信と農業、一見すると全く異なる分野だ。だが、地域のインフラを担うNTT東日本にとって農業に着目するのは自然の成り行きだと酒井は語る。「各地の自治体に地域の課題を尋ねると、決まって農業が真っ先に挙がる。それに農業は物流やエネルギーなど関連産業も多岐にわたる。日本を支える基幹産業だと改めて感じた」。

 各地の農業に関する困りごとを1つひとつ聞いて回り、ITや通信による解決策を提案し、実証実験を繰り返した。例えば山梨県内のブドウ農家の老夫婦は、高級品種だが手間のかかるシャインマスカットの栽培に苦労していた。「温室の室温が33度を超えたら窓を開けて熱を逃がさないと品質が落ちてしまう。いちいち見に来なくても、すぐに分かる仕組みがあれば…」。

 そんなきめ細かい課題を解決しながら積み重ねた経験を基に、汎用的な農業向けIoT(インターネット・オブ・シングズ)サービスを構築していった。

 各地の自治体や農業協同組合、農家や農業生産法人に通算500回ほど通った。1年目は地域の人たちにIoTとは何かを説明し、2年目にPoC(概念実証)でIoTの具体的な効果を見てもらい、3年目に本格導入していく。「田畑まで来てくれて、泥にまみれてくれたのはNTT東日本だけだ」。そんな声をかけてもらえるようになった。

 地域密着の通信インフラの会社として、農業を核とする地域の社会課題の解決にITと通信で貢献したい――。そうした思いを膨らませて、農業事業の新会社設立へと歩みを進めてきた。

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