業界や省庁の壁にとらわれず「金融EDI」の普及に闘志を燃やす。金融EDIは日本経済の生産性を向上させる大本命だと位置づける。銀行や大企業を巻き込み、中小企業のデジタル変革を狙う。

(写真:寺尾 豊)
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 「企業間の受発注をデジタル化すれば、日本経済の生産性は飛躍的に向上する」。クラウドサービス推進機構理事長の松島桂樹はこのような信念を胸に、金融EDI(電子データ交換)の普及に向けて業界を駆け回る。

 EDIは企業間の受発注をデジタルデータでやりとりできる仕組み。金融EDIは受発注データに加え、受発注に伴う決済データも交換できるようにして、経理までも効率化する仕組みだ。

 金融庁や全国銀行協会は2018年12月、金融EDIを実現する「全銀EDIシステム(ZEDI、ゼディ)」を稼働させた。ZEDIは企業間の支払い情報に取引データを加え、決済を自動化できる。

 松島は「ZEDIの最大の受益者は中小企業」と強調する。省庁の壁を越え、銀行や大企業を巻き込み、ZEDIを活用する企業を増やそうとしている。

「金融EDI」名付けの親

 松島は1971年に日本IBMに入社、製造業担当などを経て1995年に経営学の研究者に転身し、中小企業向けにITを活用した経営改革をアドバイスしてきた。

 金融EDIに深く関わり始めたきっかけは、トヨタ自動車グループの1次サプライヤーである小島プレス工業とのプロジェクトにあった。

 2010年、ITコーディネータ協会とともに、小島プレス工業と取引のある2次、3次の下請けのグループ企業にEDIを導入し、小島プレス工業のEDIと受発注データを交換できるようにした。続いてEDIによる業務効率化をさらに進めるため、受発注データに加え、お金の流れのデータも同時にやりとりする実証実験を始めた。銀行システムと連携し、請求に合わせて自動的に支払いを実行したり、入金を帳簿に反映したりすることを狙った。

 効果は想定以上だった。下請けの中小企業は納品のたびに決済が完了するようになり、資金の回収スピードが格段に速まった。「これは日本の中小企業を活性化させる鍵になる」。そう確信した松島は、この仕組みを「金融EDI」と名付け、普及に乗り出した。

 中小企業の多くは、取引先からの入金通知と自社の受注明細を経理担当者が手作業で突き合わせ、売掛金を処理している。中小企業が金融EDIを導入すればこうした経理の手間を省けるうえ、納品から資金回収までの期間を短縮し、経営の効率を高められる。

 松島の金融EDI構想は政府も動かした。政府は2014年6月にまとめた日本再興戦略に「企業の決済事務合理化に向けた取り組みを進める」との方針を盛り込んだ。

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