楽天でデータサイエンスの組織を立ち上げ、データ戦略を日々考え続ける。人の幸せを追求するために、AI(人工知能)技術にできることは何なのか。米ハーバード大学で物理を学んだ33歳は「第2の創業期」のキーパーソンだ。

(写真:的野 弘路)
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 「アマゾン・エフェクト」「デス・バイ・アマゾン」―。米アマゾン・ドット・コムが、その名を冠した現象で破壊者(ディスラプター)の名をほしいままにしている。その裏で、国内で誰よりも早くアマゾンの脅威と対峙してきたのが楽天だ。創業はアマゾンより3年遅いが、日本でのサービス開始時期でいえば楽天が3年先輩だ。

 「理論物理学者が天職だと思っていた」と話す33歳の常務執行役員、北川拓也が挑戦するのは、アマゾン超えでも、ノーベル賞でもない。「データやAIは新しい産業革命の源泉。楽天の顧客や出店企業、ひいては世の中の多くの企業が使えば、もっと顧客中心のサービスができる」。楽天グループ国内外の70以上のサービス、楽天市場でいえば2億点以上という商品群のデータから最大の価値を引き出し、顧客や企業に還元する。これが北川の挑戦だ。

 2013年に当時最年少で執行役員に就いて以降、楽天市場の出店企業や、出店企業を支える社内のコンサルタントに対し、データを簡単かつ効果的に使えるツールを開発、提供してきた。データ活用を促す社内役員中心のイベント「データサミット」を6回にわたり開催するなど、周囲を巻き込みデータやAIの有用性を説いてきた。

 データから顧客の好みを詳細に分析できる楽天の強みは、需要が多様化する成熟市場においてこそ生きるという。例えば、何にどれくらいのお金をかけるかは人それぞれ異なる。イヤホン1つとっても、1000円のイヤホンで満足する顧客もいれば、いつも5000円前後の商品から選ぼうとする顧客もいる。赤ワインは常に高価な品を買っているのに、白ワインは安価な品で満足している人もいる。

 データから読み取れる価値は顧客の分だけ存在する。それらを解釈し、顧客1人ひとりの「感情」をもっと理解するサービスを作る狙いだ。

 北川はそれを「デジタルツイン(デジタルの世界の双子)」と呼ぶ。顧客のことをよりよく理解し、顧客がよりよく生きるための手伝いをする。それこそがAIに求められる役割であり、北川が楽天で実現したい世界だ。顧客をよりよく理解した双子のようなAIが世の中に広がれば、世界はもっと幸せになる。北川はそう考えている。

GDPのような経済指標に代わり「顧客の幸せ」を測る指標を作れないか、考えを巡らせている(写真:的野 弘路)
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