万年2位の携帯電話会社から、客にワクワク感を提案する会社への転換を目指す。自らアジャイル導入の旗を振り、顧客企業と新事業を共創するビジネスにかける。KDDI発足から20年の節目となる2020年に、5Gでオレンジ旋風を起こせるか。

聞き手=編集長 大和田 尚孝

社長に就任して約半年、振り返っていかがですか。

 もっとあっという間に過ぎるかと思いましたが、長いですね。業務範囲が一段と広がったうえに、良いことも悪いことも毎日のように起こるわけです。例えば今夏は水害や地震など自然災害への対応もありました。

良かった点は。

 社長になってから2つのことを広く訴えてきました。「お客様に一番身近に感じてもらえる会社になりたい」と「ワクワクを提案し続ける会社になりたい」です。

高橋 誠(たかはし・まこと)氏
1961年生まれ、滋賀県出身。1984年横浜国立大学工学部卒、同年4月京セラ入社。同年6月第二電電(DDI、現KDDI)へ出向(後に転籍)。KDDI執行役員専務バリュー事業本部長兼グローバル事業本部担当などを経て、2016年執行役員副社長バリュー事業本部長兼経営戦略本部担当。2017年執行役員副社長全社新事業担当、バリュー事業本部長兼経営戦略本部長。2018年4月から現職。(写真:村田和聡)

 お客様に一番身近に感じてもらうためには、自分たちがお客様を一番知る必要があります。幸い当社には、個々のお客様が当社のサービスをどう使っているか、リアルの携帯ショップなどの接点を含むデータがある。それを分析するAI(人工知能)もあります。これらを使うことで「一番身近に感じてもらえる」を達成できると思っています。

横文字の新語を話す人は信じるな

 ただ気を付けなければならないのは、世の中にIoT(インターネット・オブ・シングズ)、5G、ビッグデータ、AIといった言葉が乱立していることです。社員もそういう言葉を話します。でもIoTや5G、デジタルトランスフォーメーションで何をやるのと尋ねても答えられない。

 私は社長になる前から「横文字の新語を主語にして話す人間は信じるな」と言い続けていました。代わりに「価値共創」「本業貢献」「世界基盤」と漢字を多用しています。

AIは身近に感じてもらうための道具に過ぎないと。

 ええ。同様に、「ワクワクを提案し続けられる会社になるというのは、実はIoTや5Gのことなんだよ」と言いたいところを、あえて横文字の新語を一切外してみたのです。

 もちろん実行段階ではIoTも5Gも全力で使わないといけません。でも、まずは目指す姿をわかりやすい言葉で明確にしたかった。特に「ワクワクを提案し続ける会社」という表現は、あっという間に社内に浸透し、社員の意識を合わせられました。これが良かった点です。

横文字を使って恐縮ですがKDDIはオープンイノベーションに注力しています。強みはどこにありますか。

 この9月、東京・虎ノ門に専用拠点「KDDI DIGITAL GATE」を開設しました。今までは通信会社として、顧客が要望する仕様通りの物を作ってきました。しかし現在は、顧客をパートナーと位置付け、一緒に新事業を創出していく時代に突入しています。

 でも例えば世の中で「プラットフォームを作っています」と言う企業の半分くらいは、前者の形でのプラットフォームづくりだと思います。当社はそうではなく共創、つまり顧客と共に創造することを目指しています。

受発注の関係ではなく対等なパートナーとして協業していくと。

 はい。前者と後者では顧客と我々との目線が全く違います。前者はウォータフォール型。「これを作って」という感じです。共創だと「一緒に何か作れませんか」という形になります。後者を推進するにはそれに向いた専門の施設が必要だと思い、KDDI DIGITAL GATEを設けました。

 社外の事例などもいろいろと勉強して、共創にはいくつかの要素が必要と考えました。第1にデザイン思考ができること。第2にPoC(概念検証)をするための開発環境を持ち合わせていること。第3に各種のセンサーから届くデータを分析できる環境です。スタートアップの人たちの新たな発想も大事でしょう。これらの要素をそろえた拠点は、なかなかないと思います。

DIGITAL GATEはアジャイル開発を積極的に採用していますね。

 アジャイル開発の手法の1つであるScrumを採り入れています。

 2012~13年頃、初めて米フェイスブックの本社に行った際にアジャイル開発という言葉を知りました。ソースコードをみんなが一斉に書き、改良しながら徐々にリリースの規模を広げていく手法を初めて聞いて驚きました。

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