ユニークなサービスを次々と打ち出す業界の異端児が先進ITの導入に熱を入れる。目指すのは水道からECまで様々なサービスの顧客接点を丸ごと担うプラットフォームだ。社長自ら旗を振り、AIやブロックチェーンの活用と陣営作りに挑む。

聞き手=編集長 大和田 尚孝

本社の1階にビットコインが買えるATMが置いてあり驚きました。

 仮想通貨は世の中を大きく変えていくとみています。購入もしないで仮想通貨を批判する人がいますが、実際に買ってみて初めて、どういうものなのかが分かります。だから機器を置いています。それに当社のガス料金は支払いにビットコインが使えますから。

ビットコインは社員や社長も買っていますか。

 日によっては列ができます。周りには勧めていますが私はやりません。始めるとそっちのほうが経営より面白くなりそうなので(笑)。

和田 真治(わだ・しんじ)氏
1977年3月、日本瓦斯入社。1995年1月、営業部西関東支店部長。1997年6月、取締役営業部長兼西関東支店長。その後、常務営業本部西関東支店長、常務営業本部営業統括兼西関東支店長、常務営業本部長、専務営業本部長などを経て、2005年6月、社長兼営業本部長に就任。2016年6月より現職。(写真:村田 和聡)

自社サイトの社長メッセージに「人工知能(AI)やブロックチェーン、オープンAPIなどを活用していく」とあります。一般企業の社長がAPIとは、かなり踏み込んでいますね。

 いまや全ての業界でIT活用が欠かせず、デジタル化で後れを取ると企業は生き残れません。当社のように保守的な業界に属する企業が他社に先んじてITを活用すれば強みになります。

 当社が大手の東京ガスさんに面と向かって挑んでも勝てません。そこでクラウドによるプラットフォーム作りという別の切り口で勝負をかけようと、クラウドをいち早く導入しました。

ガラケーの時代にクラウド導入

いつ頃のことですか。

 まだガラケーの時代だった2003年ごろです。KDDIの携帯電話の小さな画面からクラウドにつなぎ、業務の効率化を目指しました。LPガスの検針や、高圧ガスの災害を防ぐための保安検査、LPガスの配送といった業務で使い始めました。当時はクラウドへの理解が得られず、様々な人たちから「データを全部取られそうで怪しい」などと言われましたよ。

 手ごたえを感じたので、並行してフルクラウドの業務システムをゼロから構築しました。二重投資になりました。そのうちにスマートフォンが出てきて三重投資になりました(笑)。

失敗ですか。

 ええ。クラウドの導入は当時前例がなかったので、様々なベンダーと組んで、たくさん失敗をして、そこを乗り越えてきました。例えば多くのバグが出ました。テスト段階では問題なかったのに、実運用に入ると大量のデータが一気に押し寄せて。その経験をフルクラウドの構築に反映させました。

 いっぱい失敗しましたが、失敗を恐れなくてよかった。もし失敗を恐れていたら(クラウドの全面導入による)成果は得られなかったでしょう。

成果とは具体的には。

 物流業務のコストは6割以上削減できました。サーバーなどを無くせたほか、手作業でデータをコピーして貼り付けるといった現場の無駄な中間処理を無くせたことが大きかったです。

 私はLPガスの配送など現場に長くいたこともあり、業務に無駄が多すぎると感じていました。現場で使うシステム同士が連携しておらず、業務に関する情報は現場の担当者が手作業で引き渡していました。間違いが起きるし、結果の可視化もできない。

 ガス会社で最も大きなコストは物流費と人件費です。それを下げるには、現場で使うシステムだけでなく業務も変えなければなりません。特にクラウドのような新しい技術を導入する時には、今までの仕組みを捨てないとコストはなかなか減りません。

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