ペーパーレス化が進むなか、むしろネット時代こそプリンターの出番が増えると意気込む。デジタル変革の新組織設立に定額使い放題のサブスクリプションと、新たな価値創出を急ぐ。機器の売り切りと消耗品の継続販売という伝統的ビジネスモデルから脱却できるか。

(聞き手=大和田 尚孝、松浦 龍夫)

2016年度から2025年度までの長期ビジョン「Epson 25」の中で、ビジネスモデルや製品構成の転換を掲げています。

 人とモノと情報がつながる新しい社会を作るとのコンセプトの下、事業変革に取り組みます。この2019年3月期に長期ビジョンの第1期を終え、将来の成長に向けた事業基盤となるハードウエアを開発しました。高速の複合機といった商品や要素技術などは計画通り開発できたと思っています。

 ただ、投資に見合う収益が上がったかと言えば、事業規模が拡大した分だけ経費もかさみました。販売のネットワークづくりに時間がかかってしまって、なかなか売り上げにつながりませんでした。

長期ビジョンの第2期に当たる2019年4月にはデジタルトランスフォーメーション(DX)を率いる部門を立ち上げました。

 2019年度からの第2期では、実際に人とモノと情報をつなぐ世界を作っていく活動をしていこうという目的で、DX推進本部を立ち上げました。同様な役割を担っていた既存部隊を本部に格上げし、IT部門も統合しました。社内業務改革とビジネスモデルの変革を担います。

碓井 稔(うすい・みのる)氏
1955年4月長野県生まれ。79年に東京大学工学部を卒業。同年11月信州精器(現セイコーエプソン)入社。90年代にインクジェットプリンターの基幹部品である「ピエゾ方式」のプリントヘッド開発の陣頭指揮をとりインクジェットプリンターの商品化を実現した。2002年取締役就任。2008年から現職。(写真:的野 弘路)
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基幹システム、5年で統合へ

具体的な活動内容は。

 社内業務改革については全社基幹システムの統合に取り組んでいます。現在はシステムが販売会社ごとに異なり、何か変更を加える際に開発費がかかっています。在庫など経営に必要な情報の粒度もバラバラで一覧性がありません。データの整理にもかなりの人手がかかっています。

 今までの仕事のやり方を変えてでも、経営基盤を統一しようと考えています。投資額は年間20億~30億円に上りますが、3年である程度めどをつけます。最終的に全世界で統一するのは5年ぐらいかかると思います。

ビジネスモデルのデジタル化についてはいかがですか。

 AI(人工知能)などの新しいITを積極的に活用します。有望な技術を持つ大学と共同研究をしたり、ITベンチャーに出資したりしています。

 新しいビジネスづくりにも取り組みます。プリンターなどのハードを単純に売るのではなく、自らの構想力を磨いてこれまでにないビジネスモデルの創出を目指します。

 既に具体的なプロジェクトを始めています。例えば中国で5万台を超えるキオスク端末に当社のインクジェットプリンターを組み込んで、街中に設置しています。利用者がスマートフォンで撮影した写真データをこの端末に送ると、無料で印刷できます。日本のプリントシール機のイメージです。このサービスは中国のベンチャー企業カンフービーン(南京功夫豆信息科技)と組んで進めています。2019年6月には同社に出資しました。

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