ビジネスチャット世界最大手が日本市場の攻略に本腰を入れ始めた。国内外の全企業がビジネスチャットを使う時代が来ると自信を見せる。対話プラットフォームだけでなく、様々なシステムをつなぐ「ハブ」の座も狙う。

聞き手=編集長 大和田 尚孝

「Slack」の利用者が世界で急増していますね。

 はい。(毎日のように使う)デイリー・アクティブ・ユーザー(DAU)が800万人、このうち300万人が有料ユーザーです。導入企業数は7万社に達しました。連携できるアプリケーションの数も順調に増えており、当社が運営するアプリ配信サイトには1500種類が登録されています。

昨年11月には日本語版の提供を始めました。

 日本は世界の中でも最も急速に成長している市場です。DAU数は最近、英国を抜いて米国に次ぐ世界2位に上がりました。

Stewart Butterfield (スチュワート・バターフィールド)氏
デザイナーや技術者としてWeb業界に従事し、2002年に設立したベンチャー企業で、写真共有サービス「Flickr(フリッカー)」を開始。2005年、Flickrは企業ごと米ヤフーに買収された。2009年に共同設立したベンチャー企業のタイニー・スペック(現スラック・テクノロジーズ)で独自開発したコミュニケーションツールを基に2013年、「Slack」の提供を開始。(写真:村田 和聡)

Slackをはじめとするビジネスチャットが企業に急速に広がっている現状をどう分析しますか。

 現場の利用者自身が私たちのツールに価値を見出していることが大きいと思います。企業の従業員やマネジャーが部署単位で使ってみて、便利で価値があると感じてもらえた。我々から売り込んだのではなくボトムアップでニーズが積み上がった結果です。利用者のクチコミ効果も広がりに一役買っています。

知的作業にスーパーヒーローを

日本について言えば、ホワイトカラーの働き方改革に対する盛り上がりも追い風ですか。

 その通りです。伝統的に製造業が強かった日本ではこれまで、企業はロボットや生産ラインに大きな投資をしてきました。1970年代、働き手の主役は工場の作業員であり、1人で多数のロボットを従えて作業をする作業員はスーパーヒーローでした。

 今は(労働生産性を高める)投資の対象がナレッジワーカーに広がりつつあります。高価な機械や専門知識が必要だった知的作業を、パソコンやスマートフォンの普及により一般の従業員でもこなせるようになった。

 つまり知的なスーパーヒーローが生まれる時代が訪れたわけです。当社の事業が急速に伸びている背景にはこうした働き方に対する意識の変化があります。今後10年で、全てのナレッジワーカーがSlackをはじめとするビジネスチャットツールを使うようになるだろうとみています。

ビジネスチャット分野にはたくさんの競合がいます。Slackの特徴は。

 パートナー企業の幅広さだと考えています。欧州SAPや米グーグル、米セールスフォース・ドットコムのほか、人事管理の米ワークデイにクラウドストレージの米ボックスなど、著名なIT大手が名を連ねています。

 SlackをパートナーのITサービスと連携させることで、ユーザーは営業系や人事、ファイル共有など様々なITサービスを一段と便利に使えるようになります。例えばSlackでメッセージを投稿するだけでBoxにデータを格納できます。

日本のSlackユーザーは今のところIT技術者が中心です。チャットを起点にしたアプリ連携やシステム運用を自動化する「ChatOps(チャットオプス)」といった特徴が受けたのでしょうか。

 そう思います。個人作業の生産性はパソコンやスマホが発達してずいぶん高まりました。しかし人から人に処理や情報を引き継いだり受け渡したりするチーム作業については、個人作業ほどの変化は起きていません。チーム作業の生産性の低さが組織や企業のボトルネックになっています。

この先は有料会員の登録が必要です。「日経コンピュータ」定期購読者もログインしてお読みいただけます。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら