経済産業省はDXに向け、企業に古い基幹系システムの更改を促す異例の注文を出した。DXを促進できなければ日本の競争力が沈下するという危機感の表れだ。「2025年の崖」を回避できるのか、経産省の責任者に聞いた。

 「このままでは国の競争力を考えるうえで大きな損失につながる」。経済産業省の成田達治大臣官房審議官(商務情報政策局担当)は強い危機感を口にする。「ITベンダーもユーザー企業も変わらなければならない。双方が危機意識を持っている今は変化のチャンスだ」。

経済産業省の成田達治審議官
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 経産省はデジタルトランスフォーメーション(DX)推進のための課題と取り組みの方向性を示す「DXレポート」を2018年9月に公表した。ユーザー企業のIT担当役員やITベンダーの役員が参加する「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」を2018年の5月から8月にかけて開き、その議論をまとめたものだ。

 DXレポートで経産省は、古く複雑になった基幹系システム、すなわち「レガシーシステム」が2025年以降に残った場合、毎年最大で12兆円の経済損失が生まれると指摘した。「2025年の崖」と名付けたこのシナリオは瞬く間に国内の企業向けIT関係者に広がった。

元凶は全てレガシーシステム

 「日本のITに関する問題のかなりの部分がレガシーシステムに凝縮されている」。DXレポートをまとめた中野剛志商務情報政策局情報技術利用促進課長は話す。

 ユーザー企業が新規のIT投資を増やせないのも、ITベンダーが多重下請け構造から抜け出せずに労働環境が劣悪になるのも、学生時代に先端的なITを学んだ新人技術者が古いシステムを保守運用せざるを得ないのも、全てユーザー企業が個別開発したレガシーシステムから脱却できない点に要因があるとみる。

 ユーザー企業はデジタル技術を活用して競争力を高めたい。ITベンダーは付加価値が高い領域にシフトしたい。だが、レガシーシステムの保守運用に人と金を取られて、どちらも踏み切れない状況にあるとの分析だ。

 「ユーザー企業が古くから情報化を進めてきた結果だから仕方がない側面はある」と話す中野課長は次のように続ける。「費用も時間もかかるレガシーシステム刷新の必要性を経営者に認識してもらうのがDXレポートの目的だった」。DXレポートは国内企業のDX推進に向けたシナリオとして、事業の価値向上につながるIT投資の増加、機能の追加開発にかかる期間の短縮、ユーザー企業側のIT人材の増加、IT人材の平均年収の増加などを挙げた。

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