デジタルトランスフォーメーション(DX)はバズワードではない。DXの本質は変革。変革なき企業は生き残れない。先進事例を徹底研究し、DX成功の要諦を探る。

社長自らデジタル変革の旗を振る企業が増えている。そんな1社が、北海道でドラッグストア事業を展開するサツドラホールディングスである。富山浩樹社長が語るデジタル変革論。

 2021年5月期までの5カ年の中期経営計画で示した成長戦略に、今期から新たに「DXの推進」を加えた。デジタル活用は様々な経営戦略を進めるうえで必須の要素という感覚だったので、今さら入れるべきか正直迷った。

富山 浩樹(とみやま・ひろき)氏
1999年札幌大卒。2007年サッポロドラッグストアー入社。11年取締役、12年常務。15年社長。16年に持ち株会社を設立し、現職。北海道出身。42歳。(写真:村田 和聡)
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 でも、やるんだという意思を社内外に分かりやすく発信すべきだと考え、あえて盛り込んだ。デジタル活用は業種を問わず全ての企業にとって「生き残りの肝」と言えるほど重要だ。

 いずれ「○○業」といった区分けは意味を持たなくなる。小売業で考えると、本当の意味での小売事業だけで生き残れる企業はなくなるだろう。

 今後、サブスクリプション(期間利用契約)やシェアリングエコノミーのような、スマホやネットを入り口とする新しい販売形態が加速度的に広がっていく。人々の生活にどれだけ密着できるかの競争が始まる。あらゆる企業が事業の枠を越えて収益を増やそうとして、結果的に業種を分ける壁はどんどん崩れていく。

IT人材が活躍できる多様性を

 ドラッグストアのような労働集約型の事業者は、自らの事業のコストダウンに知恵を絞り、業務を自動化するシステムをITベンダーに発注してきた。ただウオーターフォールで独自開発すると時間もコストもかかるため、それならばパッケージを導入しよう、となっていた。

 しかし、世の中がこれだけ猛スピードで変わる時代になると、パッケージでは競争力のあるサービスなんて作れない。かと言って全てを自分たちで作るのも現実的ではない。自分たちでデジタル領域のどこをコントロールすべきかを見極めて、そのための能力をきちんと持っておきたい。

 必ずしも手作りでなくていい。何も考えずに丸投げするのではなく、自分たちが考える優先順位に合うように内外のリソースを活用すればいい。

 鍵となるのは企業文化だ。様々なIT人材がWeb系や基幹系といったそれぞれの得意分野を生かして活躍できるような多様性を受け入れる企業文化にしておくのが重要だ。

 エンジニアに「小売業に来てください」と募集したって来てくれない。報酬はもちろん大切だが、エンジニアとビジョンを共有できる企業かどうかのほうが重要だ。そうした土壌をつくることがDXに当たっては欠かせないはずだ。

 単純な話だが、コミュニケーションツールを全部チャットにするとか、ペーパーレスにするとか、ITベンダーであれば当たり前の施策をどんどん実践していく。それだけでITから縁遠かった企業文化が少しずつ変わる。

 もっと言うと経営トップがデジタルの技術や文化にきちんと触れ、異なる文化の人たちをつなぐハブになるべきだ。エンジニアの仕事や考え方を経営者が理解することが重要だと考え、私自身2018年に1週間のプログラミング講座を受けた。

 「フリマアプリを触ったことがない、スマホ決済もしたことがない」。そんな人が経営の意思決定をしていてはDXなんてうまく行くはずがない。

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