デジタルトランスフォーメーション(DX)はバズワードではない。DXの本質は変革。変革なき企業は生き残れない。先進事例を徹底研究し、DX成功の要諦を探る。

 斬新な製品・サービスを迅速に生み出すには、デジタル化は避けられない――。デジタル変革を急ピッチで進めるあいおいニッセイ同和損害保険と旭化成の副社長が語った共通の危機感とは。

RPAで事務改革、紙の書類を半減へ
あいおいニッセイ同和損保

 経営主導でDXに臨む企業も出てきた。あいおいニッセイ同和損保である。

 「新しい商品やサービスで新しい市場をつくるため、そこに投じる人や金を生み出さなければならない」。同社の黒田正実副社長は、徹底的な業務効率化に挑む理由をこう説明する。

業務改革プロジェクトを統括する黒田正実副社長
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 デジタル技術の活用と、慣習にとらわれない抜本的な業務の見直しの両方を進め、2021年度までに約800人分の単純作業を削減する目標を掲げる。申請書や報告書などの紙の書類の半減も目指す。「新市場の創出には時間がかかる。失敗もするだろう。投資し続けられる循環をつくらないと長続きしない」(黒田副社長)との危機感があった。

 2017年度に本格的に取り組みを始めた業務改革推進チームは目標達成に寄与するITツールの選定を急いだ。2018年春から米マイクロソフトのクラウド型業務システム「Dynamics 365」をワークフロー基盤に導入。パソコンによるデータの入力や収集といった定型業務を米ユーアイパスのRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツールを使って自動化した。

本社のプロジェクト推進室に設置したRPA用パソコン
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 2018年度の導入対象には所属する社員が多い10部門を選定。削減効果の拡大を狙った。10部門にはツール導入に合わせて業務の全面的な見直しを求めた。「押印一つでも法に基づくものなのか上司に把握してもらうためなのかによって意味は変わる。本当に必要な作業だけに絞り込んだ」(佐古田有宏経営企画部プロジェクト推進グループ担当次長)。

 取り組みを単純に現場任せにしないのが同社のDXの特徴だ。「業務の見直しやツールの導入を現場に一任すると部分最適にとどまり、効果が限定的になる。個別最適の集合が全体最適になるケースはほとんどない」と黒田副社長はみる。

 業務改革推進チームが各部署の担当者と議論しながら、ワークフローやRPAツールを最大限使う前提に立った新しい業務プロセスを全体最適の視点で設計した。例えば営業拠点と経理部門にまたがる保険料精算業務は、入金明細を集めて報告書を作る作業を経理部門のソフトロボが担うように変えた。もともとは営業拠点が担当していた作業を全体で見直した結果、経理部門で自動化したほうがよいとの結論だった。取り組みの効果で、経理部門の業務量は年4万時間分減る見込みだ。2019年度以降も対象の部門や業務を広げながら業務改革を継続していく。

図 あいおいニッセイ同和損害保険における保険料精算業務の流れ
業務プロセスを見直しDX推進
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 損保会社には事故による損害額の査定のように人間でなければ難しい業務がある。ディスラプター(破壊者)にとっては参入障壁だ。「だが、その常識を揺るがす破壊者が出てくるかもしれない。いざ出てきたときに慌てるのではなく、自分たちが先に変わっておく必要がある」と黒田副社長は話す。

 変化とは「どんな職場でも変革が起こせるという感覚を社員全員に持ってもらう」(黒田副社長)ことだ。全社での継続的な業務改革を通して全社員がその感覚を養う。単なるRPA導入案件と思えるかもしれないが、DXに向けた変化の先取りの第一歩である。

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