浦島太郎をモチーフにした携帯大手のテレビCMではないが、平成元年の人が今年にタイムトリップしてきたら、まるで浦島太郎だろう。この31年間で通信速度は100万倍に上がり、製品やサービスの世代交代も進んだ。

 2019年9月、平成を象徴する日本の通信サービスが終了する。ポケットベル、通称ポケベルだ。サービス開始は1968年と古く、携帯電話が普及する前、平成初頭の90年代前半に広がった。

ポケベルの端末例
音が鳴るだけだったポケットベルは、数字や文字が送れるように進化した(写真提供:NTTドコモ)
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ポケベルの端末例
1990年代前半は女子高生を中心に大ブームを巻き起こした
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 当初は文字通り呼び出し音が鳴るだけだった。87年4月に「数字表示タイプ」が登場。発信元の電話番号を通知するのが主な用途だったが、90年代に入ると「0840(おはよう)」などの語呂合わせで仲間同士の連絡に使う高校生や大学生が増えていった。

 その後、カタカナや定型文がポケベルで送れるようになり字数も増えた。「10円の通話時間内に多くの字数を送れるよう、入力方法を暗記して高速で数字ボタンを押す操作方法が広がった」(NTTドコモ 広報部の田中麻美子氏)。

 93年にはテレビドラマ「ポケベルが鳴らなくて」が放送されるなど、若者文化を象徴する製品との認識が確立した。ピークの96年には1077万契約に上ったが、その後は95年に登場し料金水準が近いPHSに取って代わられるなどして利用が減少に転じた。

 電波が届きやすい特徴を生かし、2000年代以降は自治体の防災放送向けなどで使われ続けている。しかしポケベルとしての利用は減り、ドコモは2007年にサービスを終了。唯一サービスを続けていた通信事業者の東京テレメッセージも19年9月に撤退する。

iモードは2000年代の日本文化に

 平成の時代はポケベル以外にも様々な通信関連の新サービスが生まれた。代表格はNTTドコモが1999年に始めたiモードだろう。「話すケータイから使うケータイへ」というキャッチフレーズで、Webサイトの閲覧から着信メロディー、「写メ」と呼ばれる画像の送受信、「おサイフケータイ」による決済まで多様なサービスを提供。従来型携帯電話(ガラケー)の多機能化に一役買った。

女優の広末涼子さんをCMに起用したiモード
最盛期は5000万件近い契約を獲得し、「使うケータイ」の礎を築いた(写真:柳生 貴也)
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 iモードが成功を収めた理由についてNTTドコモの山本正明プラットフォームビジネス推進部担当部長は「それまでの携帯電話機の操作性を損なわない形で操作できた」ことを挙げる。ドコモはiモード端末の数字ボタン上部に上下左右のカーソルと決定ボタンなどを追加し、親指1本で簡単に操作できるようにした。

 サービス開始から1年半後の2000年8月に1000万契約、翌01年12月には3000万契約と利用者が急激に増えた。「利用者の伸びに設備投資が追いつかず、輻輳(ふくそう)が起きることも珍しくなかった」(NTTドコモ歴史展示スクエアの広沢祐輔館長)。

 「iモードは2000年代の日本の文化だった」。笹原優子イノベーション統括部担当部長はこう振り返る。「コンテンツづくりで通信以外の様々な業種の企業と協業したのは今で言うオープンイノベーションそのものだった」(同)。

 大ヒットしたiモードだったが、それは日本だけの独自の進化だった。ドコモは国内での成功を背景にiモードの海外展開を目指したが、端末開発にも深く関与する垂直統合モデルや通信会社がコンテンツのプラットフォーマーになる事業モデルはハードルが高く、成功しなかった。

 ドコモが端末メーカー各社から大量の端末を買い取る代わりに端末の細かい仕様まで指示するやり方は端末メーカーの企画・開発力を削ぎ、NECやパナソニックなど国内端末メーカーの多くが2010年代に国際競争に敗れ撤退を余儀なくされた。日本独自の進化を遂げた従来型携帯電話をガラケー(ガラパゴスケータイ)と呼ぶゆえんだ。

 2010年代はiPhoneをはじめとするスマートフォンの普及に押され、iモードは徐々に勢力を縮小。NTTドコモは現在もサービスを提供しているが、iモード端末については16年末を最後に個人向けの出荷を終えた。従来型携帯電話も国内の出荷台数シェアはスマートフォンを含む端末全体の1割程度と、風前の灯火だ。

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