現場変革リーダー育成塾の2期目はシステム部門以外の参加者が半数以上を占めた。1期生の影響で、個人や部門の壁を越えた助け合いが徐々に芽生えていた。そんななか、熱い思いが空転して悩みを抱える塾生が出てきた。

 前回に続き、カブドットコム証券(以下カブコム)の現場改革を支援するために筆者が講師を務めた「TMS塾」の第2期の取り組みを解説します。カブコムでは長年、部門や個人のサイロ化が進んでいました。

 そんななか、システムの開発や運用の部門を中心とした1期生が個人や部門の間にあった「壁」に針ほどの穴を開けました。そしてシステム系以外の部員が半数以上を占めた2期生はその穴を広げるべく活動していました。

「ツール屋」と「プロセス改善屋」

 塾の第2回で早くも壁を越えた動きがありました。塾生でシステム開発部の若手、青木海奈さんが第1回の後に骨折して自宅静養となり、第2回の欠席を伝えてきました。

 これを聞いた同じチームでシステムリスク管理室の伊藤公樹さん(第2期開始当時45歳)はタブレットを使ったテレビ会議システムを開発し、青木さんは第2回に自宅から参加できました。塾開催前は部門を越えた助け合いは皆無だったそうです。ささいなことですが第1期の効果だと感じました。

 伊藤さんは常に明るく行動的で、周囲の人を助けることに喜びを見いだすタイプです。そんな伊藤さんを他の塾生は「頼れる兄貴」と慕い、伊藤さんは塾生同士の助け合いを促しました。

 伊藤さんは毎回の塾の様子を写真に撮って積極的に記録に残そうともしていました。現場ではタスクボードの記載内容をどんどん細かくしていき、実作業をアナログの「バーンダウンチャート」中に「バーンアップ(右肩上がり)」で記録しました。時間をかけても作業が予定通りに進んでいない実態をあぶり出すためです。

 さらにITツールの「Toggl」や勤怠管理システムなども使って作業時間を計測し、「Todoist」でタスク消化の進捗を管理しました。各種のデータを照らし合わせることで作業の無駄を分析しました。まさに「ツール屋」です。

 伊藤さんは各種ツールの値をひとまとめに貼り出し、作業の様子が見てすぐ分かるレベルまで引き上げました。何事も詳細に記録して可視化すると改善ポイントが分かりやすくなるという境地まで達したように思います。

 システムリスク管理室からは、一つ一つ着実に行動して前進する「プロセス改善屋」であるシステム・リスク部の矢野喬一さん(同39歳)も参加しました。学んだ内容を現場ですぐに実践し、振り返りを経て改善していくタイプで、とても育てがいがありました。

 矢野さんはまず、1日の作業を5分刻みで書き出す「5分表」の作成を通じて、自分の仕事に潜む無駄の多さにがくぜんとしたそうです。その後、自律的なチームに欠かせない「自工程完結」の実践を目指しました。自身の作業工程で不良を作らず、かつ次の工程に不良を渡さないという作業方法です。

 仕事の頼み方を工夫するなどして、最終的には仕事を20%効率化できたそうです。淡々と、黙々と、改善を積み重ねる矢野さんは塾を終えて次のような感想を寄せてくれました。

図 伊藤さんが塾中盤の3週間で見える化した例
ITツールで徹底的に見える化、改善につなげる
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 管理部門からリスク管理部門に異動して、経営層とのやりとりが増えました。会社全体の課題やIT化の遅れなどを目の当たりにし、危機感は強くなる一方で、「何とかしたい」という思いから塾に参加しました。参加した当時の私は「仕事はやって当たり前」「自分が何とかすればよい」と考えていましたが、塾を通してモチベーションを高める大切さやメンバーそれぞれのスキルを生かしてチームとして取り組むことの重要さを体験し、社会人としても人としても一回り成長できました。

 具体的な成果としては、チームでプライベートな話もできるようになりました。人間性の理解は仕事での接し方にもつながります。さらにツールを使って業務の目的や完了条件、後工程なども可視化したことで、組織として「自工程完結」の意識や品質が高まりました。

 タスクを見える化したことで助け合いの機会が増えたり、朝会により会話が増えてモチベーションが高まったりしました。(振り返りの手法である)「KPT(Keep、Problem、Try)」の導入で業務の課題を可視化できたため、本来あるべき姿を考える時間も増えました。

 もちろん思うように成果が出なかったり施策を継続できなかったりした挫折も少なくなかったです。ただ、塾を通して、会社を良くしたいと考えているのが自分だけではないと分かり、意外な才能を持ったメンバーを発見できました。改善活動を全社に浸透、発展させたいと強く思います。

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