カブドットコム証券は斎藤正勝社長の肝煎りで現場変革活動に着手した。変革は本来、リーダーたちがまず変わらなければいけない。だがリーダーたちは従来の統率型のスタンスからなかなか抜け出せなかった。

 カブドットコム証券(以下カブコム)の現場改革を支援するため、筆者は「TMS塾」を2017年11月2日から2018年3月1日まで、ほぼ毎週開催となる全12回で開催しました。TMS塾はトヨタ自動車の生産方式(TPS)やそのマネジメントを基にした「TMS(トヨタ・マネジメント・システム)」を応用して、現場が自ら考えて自律的に行動できる人を育てるための塾です。

 TMS塾に参加する「塾生」は塾で学んだ知識を次回の塾までに現場で実践します。そして現場で実践して分かった「壁」を持ち寄り、次の塾で全員で共有して対策を練ります。この繰り返しにより「頭で理解していても行動できない」ことをなくせるようにします。

 カブコムは斎藤正勝社長以下、社員が改革に取り組む意欲にあふれていました。働き方や企業文化を統率型から自律型に変え、ビジネス目線でサービスを俊敏に開発・改善できる組織になるため、塾を「企業組織の筋トレ」と呼び、親しみやすくしてくれました。実は塾の第3回で後続となる第2期の相談を受け、第2期を2018年2月9日から開くことが決まりました。

 塾生は第1期がシステム部員18人、第2期が総務や人事、営業など利用部門から公募で集まった19人です。今回と次回で第1期を解説します。

「苦しいのが当たり前」から脱却

 第1期の塾で筆者がまず教えたのは現場改革活動で使う数々の「道具」についてです。具体的には、作業や進捗を可視化する「タスクボード」や、振り返りで改善を促す「KPT」、チームの成長目標とそこに向かうマネジメントの評価指標を可視化する「ビジュアル・マネジメント・ボード(VMB)」などです。筆者の連載記事ではおなじみですね。

 どの塾生も学んだ内容をすぐに実践に移す姿勢があり、実際に道具を現場で使い始めました。ところが長続きしませんでした。理由は指示・命令で組織を動かす「統率型」マネジメントが行動に染み付いているからです。上司からの指示にはすぐ従うものの、自分が納得していないため、だんだんと行動がおろそかになってしまうのです。

 塾の中盤、第6回ぐらいまで塾生は統率型の行動様式からなかなか抜けられませんでした。中盤以降は徐々に自律型に変わり始めました。塾生全員が成長しましたが、中でも特に4人の成長が印象に残っています。今回はそのうち、三菱UFJ銀行から出向しているシステム統括室の村上雅也スペシャリスト(塾開始当時45歳)と、創業期からの社員であるシステムリスク管理室の石川陽一室長(同48歳)について、それぞれの成長や思いを紹介します。

 村上さんは塾でマネジメントに対する価値観を大きく変革しました。彼が塾に参加した目的は組織全体で生産性を向上させること。これに向け、ウォーターフォール型から脱却してアジャイル開発に取り組むための土台作りや、生産性を向上するハウツーならびにチームとして活動するためのノウハウの習得を目指しました。

 志高く塾に臨みましたが染み付いたやり方がなかなか抜けません。VMBは完全に業務寄りの内容で、「申請業務に向けた…」「承認証跡に向けた…」といった文言がボードに並びました。

 筆者は毎回、「チームの活動が見えません」「本当に自分がやりたいことですか?」「現場が明るくなりますか?」「楽しい職場になりますか?」と指摘しました。この頃、村上さんはモチベーションが下がり、上司の室長に不満をぶつけていたそうです。

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