デジタル変革においてCIOはどのような役割を果たすべきだろうか。新たなサービスと既存の業務やシステムを統合してマネジメントすることが求められる。変革を実践するためのスキルや文化が異なる2つの組織をまとめることも重要になる。

 この連載は企業に価値をもたらすデジタル変革(DX:デジタルトランスフォーメーション)を組織としてどのように実践すべきかを、事例を交えつつ説明している。デジタル変革はAI(人工知能)やIoT(インターネット・オブ・シングズ)をはじめとするデジタル技術を活用して、新たな事業やサービスの創出、顧客満足度の向上などを狙う取り組みを指す。

 デジタル変革を実行するためには「価値創造サイクル」を繰り返す必要がある。価値創造サイクルは、試行錯誤によって新たな製品・サービスや業務プロセスを生み出す「価値創発サイクル」、生み出した製品・サービスや業務プロセスをビジネスの中で活用しながら改良し続ける「価値増幅サイクル」、そして2つのサイクルを連結する「ブリッジプロセス」で構成する。

 今回はデジタル変革をけん引するための役割や組織について解説する。デジタル変革を実践するためのリーダーはCIO(最高情報責任者)になるのだろうか。あるいは「CDO(チーフデジタルオフィサー=最高デジタル責任者)」のような新たな役職が必要になるのだろうか。

 またデジタル変革を実践するためには、どのような組織を置くべきなのだろうか。デジタル変革の組織を生かすうえで求められるCIOの役割についても解説していく。

CIOとデジタル変革

 デジタル化はビジネスそのもののIT化だ。中心になってデジタル化を進めるのは、ビジネスの主体である事業部門であるべきだ。事業部門が中心になるため業務システムの提供責任者である従来のCIOとは別に、CDOを設けるべきだという議論もある。

 しかしデジタル化においては、既存の業務システムと新たに創発されるサービス部品を統合してマネジメントすることが欠かせない。その理由は以下の4つのポイントを実行することが、デジタル変革において重要になるからだ。

ポイント1:デジタル変革を実践するためには新規のサービス部品を既存システムの中にどのように位置づけるかを含めて、ビジネスとシステムの全体の戦略設計図を示す必要がある

ポイント2:新規のサービス部品は既存システムに組み入れて実用化され、事業部門に受け入れられる。そして新規のサービス部品もやがて既存システムの一部になる

ポイント3:既存の業務システムを利用する価値増幅を実行する組織と、新規のサービス部品を開発する価値創発の実行組織でビジネス人材とIT人材を適切に配置し、相互に人材交流を図る必要がある

ポイント4:新規のサービス部品を開発する価値創発プロジェクトの予算と既存システムを維持管理・運用するための予算と資金配分について、全体最適で考えなければならない。プロジェクトを開始した時点で価値創発プロジェクトの予算は確定しにくい。そのため、期中に配分を機動的に見直すことが求められる

 4つのポイントを実行するためには既存システムと新たなサービス部品を統合して全体のマネジメントを行い、デジタル変革を推進するCIOが設置されるべきである。従来のCIOと役割が異なるという理由で違いを明確にするためにCDOと呼ぶのはよいが、従来の業務システムや組織と全く異なる存在ではない点に注意が必要だ。

図 デジタル変革の全体像
「価値創発」で製品やサービスを開発
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