台風19号がもたらした記録的な大雨で、関東・東北の河川が相次ぎ氾濫した。阿武隈川が流れる宮城県と福島県では、多くの市街地が浸水し、被害の実態把握に時間がかかっている。流域で何が起こったのか。日経アーキテクチュア記者は阿武隈川を下流に向かって北上しながら取材した。

 東日本を縦断し、各地に甚大な被害をもたらした台風19号。国と都道府県が管理する71河川の堤防で、合計140カ所の決壊が発生した。福島・宮城の両県はとりわけ被害が大きかった。福島県では29人、宮城県では19人が死亡した。

 両県を流れるのが、延長239km、流域面積5400km²の阿武隈川。阿武隈川流域では何が起こっていたのか。日経アーキテクチュア記者は10月14日、福島県郡山市から取材を始めた。

 郡山市では、阿武隈川沿いの郡山中央工業団地が浸水していた。工場から流出したのか、水面には油のような液体が漂う〔写真1〕。約150社の工場や事業所などが集積する同工業団地では、阿武隈川の氾濫や支流の谷田川で破堤した影響で、浸水深が約2mに達した。

〔写真1〕工業団地が大規模浸水
郡山中央工業団地の様子。2019年10月14日午後3時ごろには、まだ浸水は解消しておらず、油のようなものが流れ出ていた(写真:日経アーキテクチュア)
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 同工業団地に事業所を構え、建材や建具の販売を手掛ける丸義小林木材では、事務所の1階が水没し、倉庫にあった約3000万円分の資材がだめになった。

 独自に防水ゲートを設置したり、敷地をかさ上げしたりして浸水に備えていた企業もあるが、想定を上回る水量だったようだ。パナソニックは工場の周囲に高さ約2mの金属製の防水ゲートを設置していたが、水はゲートを越えて工場内に流れ込んだ。復旧には約2カ月を要する見込みだ。

 過去30年ほどの間に15回もの浸水被害に見舞われた郡山市は、2014年に「郡山市ゲリラ豪雨対策9年プラン」を作成。河底を掘って水が流れやすくしたり、雨水貯留施設を整備したりして、水害に備えていた最中の出来事だった。

 国土交通省福島河川国道事務所によると、郡山市内にある阿久津水位観測所では、阿武隈川の水位が10月12日午後10時ごろに計画高水位(堤防の設計の基準となる水位)を超え、13日午前1時ごろには10mまで上昇した〔図1〕。

〔図1〕計画高水位を1.3m超える
台風19号がもたらした記録的な大雨の影響で、福島県内にある阿武隈川の全水位観測所で過去最高の水位を記録した。阿久津水位観測所(郡山市)では、水位が10mに達し、計画高水位を超過した(資料:国土交通省福島河川国道事務所)
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 阿武隈川の水位は福島県内にある全ての観測所で過去最高を記録したというから、今回の大雨がいかにすさまじいものだったかが分かる。

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