台風19号で多摩川の水位が上昇し、内水氾濫や無堤部からの溢水(いっすい)が発生した。タワーマンションを多く抱える武蔵小杉や、洗練された商業施設が立ち並ぶ二子玉川などが被害を受けた。気候変動の影響で、今後も豪雨や猛烈な台風が増えるとみられる。水害対策の見直しが急務だ。

 台風19号が襲来した10月12日夜、タワーマンションが林立する川崎市中原区の武蔵小杉駅周辺エリアに茶色く濁った水が浸入した〔写真1〕。取材班が訪れた13日朝、既に水は引いていたものの、路上に残された大量の泥が、真新しい街にそぐわない悪臭を放っていた〔写真2〕。

〔写真1〕武蔵小杉駅周辺に濁った水があふれた
写真右手に見えるタワーマンション「パークシティ武蔵小杉ステーションフォレストタワー」では停電が発生した。写真中央は駅前の商業施設。2019年10月13日午前0時過ぎに撮影(写真:読者提供)
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〔写真2〕人気の再開発エリアが泥まみれに
武蔵小杉駅前の中原消防署前交差点付近で、泥を片付ける様子。写真中央が停電した「パークシティ武蔵小杉ステーションフォレストタワー」。10月13日撮影(写真:日経 xTECH)
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 泥水は駅前に立つ1棟のタワーマンションを機能不全に追い込んだ。2008年に竣工した地下3階・地上47階建て、643戸の「パークシティ武蔵小杉ステーションフォレストタワー」だ。地下の電気設備が浸水して停電と断水が発生。エレベーターやトイレが使えず、住民の大半が1週間以上も生活できなくなった。

 泥水はどこからやってきたのか。川崎市の調査で、多摩川の水が下水道管を逆流してあふれ出したことが分かった〔図1〕。周辺に降った雨水は通常、下水道管に流れ込み、「山王排水樋管」などを通じて多摩川に排出される。ところが台風19号の大雨で多摩川の水位が上昇し、河川の水が樋管を通じて逆流した。

〔図1〕武蔵小杉駅周辺では約45haが浸水
多摩川と合流する山王排a水樋管から、河川の水が逆流した。想定浸水面積は約45haだ。川崎市内では、他の地域でも逆流が発生。合計約92haが浸水した(資料:川崎市の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 川崎市は、樋管と多摩川の合流地点に設けた逆流を防ぐゲートを閉じなかった。駅周辺で大雨が降っている時にゲートを閉めれば、雨水による内水氾濫を引き起こすからだ。

 市下水道管路課の小林康太課長は、「雨水処理と多摩川の増水が同時に起こるという、運用規定で想定しない事態が発生した」と説明する。

 被災したタワーマンションがどんな浸水対策を講じていたかは不明だが、敷地の標高が周辺より少し低いことも被害を拡大したとみられる。

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